24/11/19
入れ歯とインプラント治療の違いは?併用する治療法や費用についても解説
目次
「歯がボロボロで全部ダメになってると言われたけど、絶対に入れ歯は入れたくない」
「歯がない期間があるなんて仕事にならないからあり得ない」
「何回も治療にかかるのは通えない」
「総入れ歯から卒業して固定式に変えたい」
など、患者様のご希望は様々です。
患者様のお気持ちも充分共感できますし、できる限り患者様のご希望を叶えられたらと日々思うところです。
歯が再び生えてくるような治療法が発見されれば良いのですが、現在の医療技術を持ってしてもそこまでは現段階では難しいようです。
しかし、条件が整えばインプラントを使ってその日に歯が入る方法があります。
その治療法を“All-on-X”と呼びます。
All-on-Xの「X」にはインプランの本数が入ります。
つまり何本のインプラントで噛み合わせを再構成するかによって呼び名は変わりますが、”All-on-4″は一般の方でもご存知かもしれません。
4本のインプラントで支える場合は”All-on-4″、6本の場合は”All-on-6″といったように表します。
一昔前は歯の本数と同じだけインプラントを埋入するような処置をしていたこともあるようですが、現代では多くても10本以上のインプラントを片顎に入れることはほぼ無いように思います。
この治療法が確立したことにより、インプラントを埋入する手術をした日に仮歯が入るという方法が行われるようになりました。
この治療法は20年以上前にポルトガル人のMalo先生が広めたコンセプトで、4本のインプラントで上下の歯を作り当日から噛めるようになるという方法でした。
どんな患者様での片顎4本のインプラントで噛めるようにするのがこの治療の特徴です。
インプラントが入った日にプラスチック製の仮歯が入るので、その日から入れ歯を使う必要はなくなります。
入れ歯のように取り外しをする必要がないので、患者様は着脱の煩わしさから解放されます。
この治療法は患者様からすると、1日で綺麗な歯が入るので非常に大きな喜びと達成感のある治療法であり、世界中に一気に広まりました。
しかし、この治療法にも弱点はありました。
“All-on-4, but nothing one three”(インプラントが4本あれば大丈夫、でも3本になったらどうするの?)この言葉は私がアメリカに留学をしていたときに教わった言葉で、4本のインプラントが健康な状態であれば問題ないのですが、1本にトラブルが起こると、もうどうにもならないということです。
例えば、家を建てる時のことを想像してください。
柱が4本あれば家は安定します。しかし、柱が1本ダメになってしまい、3本になるとどうなりますか?
家は傾いてしまいますよね、
また、その家を建てる土壌が弱ければどうなると思いますか??本当に4本の柱で丈夫な家を建てることはできますか??
お口の中でしっかりとした噛み合わせを作る治療は家を建てる工程によく似ています。
つまり、長持ちする家を建てるためには
・しっかりとした土壌(骨や歯茎)
・柱の本数(インプラントの本数)
・柱を立てる位置(インプラントの位置)
が非常に重要になります。
しかしこの”All-on-4″というコンセプトでは制限された骨の部位に最小限のインプラントの本数でギリギリ行う治療のため、治療を終えた直後は良い状態だったとしても、長期的な予後を考えると少し不安の残る治療法かもしれません。
先ほど、インプラントを安定させるためには「しっかりとした土壌」が必要だということをお伝えしました。
それではお口の中において「しっかりとした土壌」とはどういったことになるのでしょうか。
下顎の骨は皮質骨と呼ばれる緻密な骨に囲まれており、骨が非常に硬くなります。例えていうならコンクリートのような骨になります。硬すぎることが裏目に出ることもありますが、インプラントとしっかりと接合すると安定した状態が維持されやすいです。
とても硬い下顎骨に比べて、海綿骨と呼ばれるスポンジ状の骨が大半を占めるため、比較的柔らかい骨になります。そのため、下顎に比べると上顎の方がややインプラントの成功率が低いことがあります。
インプラントが安定して長期間機能するためにはしっかりとした土壌つまり「できる限り硬い骨」にインプラントを埋入する必要があります。ただ、もしも硬い骨がない場合にはインプラントの本数を増やすなどの工夫をしなければ、長期的に使えるインプラント治療は成立しません。
つまり、上顎骨と下顎骨でそれぞれの特徴があるため、”All-on-4″の考え方に沿ってどんな患者様でも4本のインプラントで噛み合わせを作ることは少し危険ではないかと私は考えています。
世の中の患者様たちは千差万別です。
性別に年齢、体格、骨の厚みや歯肉の厚み、噛み合わせえなど全く同じ方はいません。しかし、このすべての人を同じコンセプトで治療を行う方法が”All-on-4″になります。
つまり、年配の小柄な女性から中年の大柄でいかにも噛む力の強い人まですべて同じ治療方法で行うということです。
小柄な女性であれば噛む力も比較的弱いため、そんなにもインプラントに噛む力が掛からない可能性もありますが、大柄の男性であればやはり余裕を持ったインプラントの治療計画の方が安心だと考えています。
このように患者様の個性(体格、年齢、人種など)を無視して同じコンセプトで治療する方法が”All-on-4″になります。
“All-on-4″治療の特徴として、①でお伝えしたようにギリギリの治療法になります。
つまり何かトラブル(インプラントがダメになるなど)が起きた場合に、次の打ち手がな苦なってしまうことがあります。
トラブルが起きたインプラントの周りは細菌が感染して骨が溶けてしまうため、直ぐには同じ場所にはインプラントが埋入できません。
そこで、違う部分にインプラントを植える計画を立てなければなりませんが、他の部分にも骨がなければそれ以上にインプラントを埋入することができなくなってしまいます。
そうなると入れ歯を使っていただく以外に方法がなくなってしまう方がいらっしゃいます。
つまり”All-on-4″は次のない最期の治療法となる可能性があるということです。
このように”All-on-4″は様々なリスクや注意点がある治療法になるため、この治療法を選択する際には慎重に治療計画を立てて、進めなければなりません。
しかし、巷のホームページではこういったリスクを記載していることが少なく、患者様も正しい情報を得ることが難しいのが現状になります。
インターネット上での情報だけに振り回されず、きちんと患者様それぞれにあった治療法を選択していただき、インプラント治療に後悔する人が居なくなること祈ります。
当院では無料相談も行なっておりますので、お気軽にお問合せください。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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