24/12/07
インプラントかブリッジか迷ったら?費用やメリット・デメリットを徹底比較
『前歯はインプラントできないって本当ですか?』
『他院で前歯のインプラントはできないと断られてしまって困っています…』
『インプラント希望したけれどブリッジを勧められました』
前歯のインプラントが難しいのは歯科医師の間では有名な話です。
奥歯と比べて審美性が問われることや、前歯の骨が薄いことから、前歯のインプラントを断る先生も少なくないようです。またそのような理由から、本当はインプラント治療を望んでいたのにブリッジなどの治療を受けた患者様も多いでしょう。
実際に前歯のインプラントは非常に難易度の高い治療ですが、診査診断と適切な処置によって問題なく治療できるケースも多いです。当院では他院で断られてしまった前歯の治療や、他院の患者様の出張手術なども積極的に行なっております。
このページでは、前歯インプラント治療ができない・難しい理由や、当院ではなぜ前歯のインプラント治療が可能なケースが多いのか、インプラント治療を専門としているLOHASデンタルクリニック院長の福居が解説します。
目次
奥歯と比較すると前歯の骨は薄いことが多く、その中でも人種による違いもあり、欧米人(コーカソイド)と比較すると日本などのアジア人(モンゴロイド)は歯茎や骨が薄いことが証明されています。
特に前歯においては、歯が残っている状態でも歯の外側(唇側)には1mm以下の骨しか存在しておらず、この薄い骨も歯を抜歯することにより吸収されてしまい、歯を抜いて治った頃には周りの骨はかなり吸収し、骨が非常に薄くなってしまいます。
つまりインプラントの治療が必要となった時には、骨を作る治療(骨造成術)が必要になることが大半になります。
インプラントの長期的な予後を研究した論文では、インプラントの周りには最低2mm以上の骨の厚みが必要だという研究結果が出ています。
また、歯肉の厚みも非常に大切になります。歯肉の厚みの薄い日本人は矯正治療や歯ブラシの当てすぎなどにより歯肉退縮(歯茎下がり)を起こしやすいと言われています。
骨を守っているのは周囲の歯茎になるので、歯肉の厚みも重要です。
このように「骨」と「歯肉」の両方が前歯のインプラントには求められます。
前歯は奥歯と比較して、パッと見て目につく部位になります。つまり、その患者様の見た目に直結する部位の治療になるため、より美しい結果を求められます。
この「美しい結果」は患者様や見る人の価値観によって異なります。
前歯の見た目が左右非対称であっても気にされない患者様もいらっしゃれば、きちんと左右対称の結果を求められる患者様もいらっしゃいます。
また笑った時に歯茎まで見えるからもいらっしゃれば、笑っても歯の一部しか見えない患者様もいらっしゃいます。
笑った時に歯茎まで見える患者様の方が、前歯の治療はシビアになり、より高いレベルの結果が求められます。
このように審美性は患者様の価値観にも左右されるので、一概には定義することは難しいですが、特に前歯のインプラント治療を行う場合は、患者様の求められる審美性のゴールと治療で達成できるであろうゴールの擦り合わせはとても大切になります。
前歯はインプラントの埋入ポジション(角度や深さ)が非常に重要になります。
なぜなら、インプラントの埋入ポジションによって、インプラントの予後や審美性(見た目)に直結するからです。
例えば、インプラントが深すぎる位置に埋入されてしまうと、被せ物の形が大きくなってしまいます。また、インプラントがより前側に埋入されてしまうと、被せ物の形は歪な形になってしまいます。
このように、前歯のインプラントのポジションはピンポイントでの埋入が必要とされるため非常に難易度が高くなります。
前述したように、私たちアジア人は欧米人と比較して、歯肉の厚みが薄いことが多いため、術後に歯茎の退縮が起こりやすいことが分かっています。
そのため、前歯にインプラントを埋入した直後はきれいな状態であったとしても、長期間経過する間に歯肉の歯茎下がりが起こってしまい、インプラントのネジが露出してしまうことがあります。
インプラントの周りに充分な骨があればこのようなことは起こりにくいとされていますが、前歯部は元々骨が薄く充分な骨に囲まれていないこともあります。
そこで、この薄い骨の吸収を補うため、薄い歯肉を分厚くするために歯肉の移植を行い、術後の歯肉下がりを予防することで、長期的な予後を補う処置も行います。
上顎の前歯の裏には切歯孔と呼ばれるトンネル上の骨の空洞があり、その中を鼻口蓋神経と呼ばれる神経と中核後鼻枝と呼ばれる動脈が通っています。
この神経は切断してしまっても、日常生活に支障をきたすことはありませんが、手術の時にこの動脈を切断してしまうと出血を伴います。
出血してしまったとしても、止血がきちんとできる手術の経験の豊富な歯科医師であれば問題ないですが、経験が浅いと止血が難しくなるため要注意です。
前述したように、前歯のインプラントの場合は単純なインプラント埋入の症例よりも、追加で骨を作ったり、歯肉の移植をするなどの付加的な処置が必要なことが多くなります。
それに伴い、骨造成術代や歯肉移植代などが追加でかかってしまうので、総合的な治療費用が高くなってしまうことが多いです。
骨がなさすぎる場合でも決して不可能という訳ではありませんが、その場合は骨を作るところから始めなければなりません。
また骨を作る際にもご自身の骨を移植するような治療法(自家骨移植)など様々な方法を駆使して治療を行うことも想定されるため、骨が充分にある単純なインプラント治療と比較して、治療期間や治療費用がより掛かる可能性はあります。
全身的な病気とインプラントの相性に関しては解明されており、前歯部だけに関わらずインプラント治療を注意深く進めていく必要があります。
男性においては糖尿病やタバコが要注意になります。
糖尿病に関しては進行度を判定するヘモグロビンA1c(HbA1c)を基準に判定することが多く、この数値が7.0%を超える場合はインプラント治療は進められません。まずはきちんと内科的な治療を受けていただき、糖尿病が改善した時点での治療が可能となります。
また喫煙においては、煙に含まれるニコチンに血管収縮作用があり歯肉の血管を収縮させ、血流を低下させてしまいます。タバコを吸っている方の歯肉が薄暗い色になっているのはこのためです。この血流に乗って様々な栄養などが歯肉に届けられるので、血流が低下してしまうことが原因で、インプラントが失敗につながるリスクが高まることは研究結果としても証明されています。
女性においては閉経後の骨粗鬆症のリスクは要注意です。女性ホルモンであるエストロゲンは骨からカルシウムが引き出されることを防ぐという重要な役割を担っています。しかし、閉経に近づくとエストロゲンの分泌は減少の一途を辿り、高齢の女性は骨粗鬆症に罹患しやすくなります。
骨粗鬆症の診断を受けたとしても、初期のレベルであればホルモン剤やビタミン剤などの投与程度でインプラント治療には影響がありませんが、重度になり骨に直接作用するような薬剤(ビスホスホネート製剤)などの投薬が始まると、インプラントは要注意になるので、担当医の先生に報告が必要になります。
妊娠中の患者様へは外科的治療が躊躇されます。
一般的には安定期16週〜27週であれば、必要最低限の外科処置は可能とされています。しかし、インプラント治療は緊急性の低い外科処置のため、妊娠中にわざわざ行うことはしません。
親知らずが腫れてしまい、抜歯をしないと治癒しない場合など、外科処置を受けることのメリットとデメリットを比較した上でメリットが上回る場合は、外科処置を行うこともありますが、非常に稀な場合のみになります。
患者様が未成年の場合はインプラント治療はお勧めしておりません。
なぜなら、一昔前までは女性であれば15歳までに、男性であれば18歳までに下顎の成長は終了すると言われていましたが、近年ではクラニオフェイシャルグロース(顎骨の晩期成長)と呼ばれる成人以降も顎骨が成長することが証明されています。
つまり成人以降も顎骨は成長するため、最初は噛み合わせに問題がなかったインプラントが5年〜10年の経過とともに噛み合わなくなってくる(厳密には歯と顎は動くけれどもインプラントは動かないため取り残される)などの現象が起きる可能性があるとされています。
特にこの現象は面長の女性に起こりやすいとされているため、特に未成年の患者様へのインプラントはかなり要注意になります。
引用:クラニオフェイシャルグロース(顎骨の晩期成長)が女性に起こりやすい事を示した研究
それでは前歯を失ってインプラント治療も難しい場合にはどのような選択肢が残されているのでしょうか。インプラントが無理だったとしても審美的に治療することは可能ですので、参考にしてください。
ブリッジは基本的には歯を失った部位の両隣の歯が差し歯などの治療済み歯の場合にお勧めの治療法になります。
歯の頭の数よりも支える根っこの数の方が少ないので、支える歯根に負担がかかる点は避けられませんが、外科処置をせずに失った歯を補える素晴らしい方法になります。
また審美的には左右の歯のバランスを整えるなどはインプラント治療よりも比較的容易なことが多いですし、素材としてセラミックを選択すれば、天然歯と見間違える仕上がりを得ることができます。
両隣の歯が既に差し歯になっている場合は、差し歯をブリッジに交換するだけで歯がない部分を補うことができます。しかし、隣の歯が健康な歯(あまり削られていない歯)の場合は要注意です。差し歯型のブリッジを入れようと思うと、健康な歯を削る必要が出てきます。
しかし、そこで歯の削除量を最小限にするブリッジの治療法として接着性ブリッジ(メリーランドブリッジとも呼びます)というものがあります。
この治療は接着の技術が飛躍的に向上したことで可能となった治療法で、歯の削除が非常に少ないため、従来の差し歯型のブリッジのデメリットを解決することができます。
注意点としては、あくまでも隣の歯に接着しているため、硬い食事を食べると脱離(もしくは破折)してしまう可能性がある点と、噛み合わせや歯並びによっては難しい場合があるという点になります。
前歯の入れ歯に関しては、審美性が他の治療と比較すると劣る可能性が高いです。部分入れ歯の場合は隣の歯に入れ歯を安定させる金属製のフックが必要になるので、このフックを引っ掛ける部位によっては笑った時に見えてしまう可能性があります。
健康保険外の入れ歯でこのフックをピンク色の樹脂にすることで笑った時に目立たなくなる入れ歯(ノンクラスプデンチャーやスマイルデンチャー)などを入れると比較的目立たなくすることが可能になります。
入れ歯のメリットは外科処置をすることなく作成できることになりますが、デメリットとしては必ず取り外しが必要になるという点と入れ歯のフックがかかる歯には負担がかかってしまうという点になります。
2008年に日本補綴学会がまとめたガイドラインを参考にすると、装着後5年〜10年の間ではブリッジとインプラントを比較して、成功率はそれぞれ90%近くで、差がないことが示されました。特に両隣の歯に神経が残っている場合は成功率が保たれるようです。
つまり歯の神経が残っている場合はインプラントでもブリッジでも対応ができるが、歯の神経の治療を終えている場合はできればインプラント治療の方が長期的な成功率が高いと考えられます。
入れ歯に関しては特殊な入れ歯でない限りはどんどん人工歯がすり減るなど消耗してしまうため、長くても5年が寿命になります。
長期的に安定した状態を維持するためにはインプランもしくはブリッジが優れており、その中でも残っている歯の状態や噛み合わせによって、どちらがより適切かは判断する必要があります。
ブリッジや入れ歯の弱点である「両隣の歯に負担を掛けている」という点を唯一克服することができるのがインプラント治療になります。
特に隣の歯が健康な歯であった場合は、その歯をたくさん削ってブリッジにするかもしくはインプラント治療を行い、健康な歯を削ることを回避するかは常に患者様と相談する点になります。
歯に対する価値観は患者様によって大きく異なるため、どちらが絶対正解ということもありませんので、医療的な観点と患者様の視点から見て最もその患者様に良い選択ができるように、当院では心がけています。
ブリッジは素晴らしい治療法の選択肢ですが、歯を支える根があるわけではないので、その部分に噛んだ時の刺激が加わることはありません。
また入れ歯はその部分の歯茎で入れ歯を支えるので、噛んだ時の感触は歯茎には伝わりますが、歯とはまた異なった感覚になります。
インプラントが唯一、その部分にある根(インプラント)に噛んでいるという感覚が伝わる治療法になります。
天然の歯とインプラントでは噛んだ感覚に若干の違いはありますが、馴染んでくるとほぼその違いはなくなり、インプラント治療を受けた患者様達は自分の歯のように噛めるようになったとよろこんでくださいます。
上記のメリットに示したように現代の医療技術では、第一選択はインプラント治療が最も患者様へのメリットがある治療法になります。
しかし、インプラント治療が非常に歯科医師の技術に依存する治療であることは間違いないので、以下のことには注意が必要になります。
前歯のインプラントには術前の治療計画と非常に繊細な手技が必要な治療になります。
日常的にインプラントの手術をしている歯科医院であれば良いですが、そうでなければ少し不安があります。
歯科医師の技術はもちろんのこと、クリニックの設備や手術に慣れているスタッフが居てるクリニックでの手術が安心かと思います。
抜歯が必要だと判断された歯であったとしても、色々と抜歯までにできることがあります。
その中の一つが、ソケットプリザベーションと呼ばれる抜歯後の吸収をできる限り抑える方法になります。
その他にも抜歯が必要な歯を引っ張り出して、歯茎の増大を測る治療法など様々な使い道がありますので、ぜひ抜歯を行う前にご相談されることをお勧めいたします。
前歯のインプラントは骨が薄く、骨造成術や歯肉の移植など付加的な手術が必要なことが多いです。そのため、追加で治療費用が掛かります。
またそれらの手術に精通した歯科医師のいるクリニックでの手術をお勧めします。
治療計画を立てるには抜歯をしてから考えるのではなく、抜歯前から計画を立てることが非常に大切です。
当院ではまず抜歯が必要になった原因を追求し、他の歯が今後犠牲にならないように十分に配慮しております。
そして次に、抜歯が必要な歯に利用できる部分がないかをしっかりと検討します。
具体的には抜歯が必要な歯であったとしても、歯を引っ張り出す部分矯正(歯の挺出術)をすると周囲の骨や歯茎が一緒に引っ張られることで、少しですが骨や歯茎を補うことができます。
それも無理な場合は、抜歯と共に骨の吸収を抑制するソケットプリザベーションと呼ばれる処置を同時に行なうことを検討します。
このように、まず抜歯までに色々とできる治療が実はあります。
次にすでに抜歯済みの場合は、インプラントの埋入ポジションを決めていく段階になりますが、とりあえず骨のあるところにインプラントを入れると必ず失敗します。
当院ではインプラントの位置やその上の被せ物の形は笑った時に見える口ものとスマイルラインから逆算して決めております。前歯のインプラント治療が終わった後も患者様が遠慮なく歯を見せて笑うことができるように、口元の見た目(外見)から歯の形を逆算し、また周りの歯とのバランスを見ながらインプラントの埋入の位置や深さを徹底的に考えてきます。
その理想的な埋入位置に骨が足りなければ、インプラントの埋入と骨造成を一緒に行います。前歯は骨が薄いことが大半ですので、ギリギリの厚みの骨にギリギリのインプラントを入れてしまうと長期的には徐々に歯茎が下がりやすいことは証明されています。
そこでインプラントがしっかりと骨に守られるように十分な厚みの骨を再生する治療を同時に行います。必要があれば歯茎の移植も検討しながら、周りの歯や組織と調和の取れた仕上がりになるように丁寧に行っていきます。
最後のセラミックの歯の形や色も、患者様のご希望や周りの歯とのバランスを見ながら技工士と相談しながら、最終的に決めていきます。
このようにインプラント治療の中でも、特に前歯の治療は周りの歯とのバランスや審美性に直結するので歯科医師の技術や経験が求められる場所になります。
そして抜歯前からインプラント治療計画を立てることでより良い結果を得ることができますので、前歯の抜歯やインプラントでお悩みの方はぜひ一度ご相談ください。
当院では無料相談も行っております。インプラントのことがよく分からないけれど、詳しく話を聞いてみたいという方はいつでも遠慮なくお問い合わせください。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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