25/01/17
全部の歯をインプラントにする理由|デメリットや費用、具体的な方法について
『奥歯を抜いたんだけど、ブリッジで良いのかな』
『ブリッジは保険が効くけど、インプラントの方が長持ちすると聞いた』
『他の歯を削らずに治療できる方法はないのでしょうか?』
歯を失った際の治療法として、インプラントとブリッジが選択肢として挙げられます。しかし、治療費や治療期間、メリット・デメリットが異なるため、どちらを選ぶべきか迷われている方も多いのではないでしょうか。
そこでこのページでは、インプラントとブリッジの違いや治療にかかる期間と費用、それぞれを併用した治療や、ブリッジからインプラントに変更をしたケースなど、実際の症例も交えてインプラント治療を専門としている奈良県のLOHASデンタルクリニック院長の福居が解説します。
目次
インプラントは、顎の骨にチタン製の人工歯根(インプラント体)を埋め込み、その上に人工の歯を装着する治療法です。
顎の骨に埋め込んだ人工歯根が支えとなって単独で植立するため、周囲の歯に負担をかけない特徴があります。
ブリッジは、欠損している歯の両側の歯を削り、橋をかけるように金属やセラミックの人工歯を装着する治療法です。
削った歯に負荷をかけてしまうデメリットがありますが、インプラントとは異なり保険診療での治療が可能で、治療期間も短く人気の高い治療法の一つです。
インプラント治療においては3本の歯がない部分に対して、3本のインプラントを埋入するのではなく、2本のインプラントの支えに対して3個の歯を装着する「インプラントブリッジ」と呼ばれる治療法もあります。
現在使われているインプラントは性能が向上しているため、天然の歯とは違いインプラントブリッジにしても問題ないという研究結果が出ています。
ここからは、インプラントとブリッジの違いについて、5つの観点をもとに解説します。
以下で詳しく解説します。
ブリッジを作製する際には欠損している歯の両側にある健康な歯(支台歯)を削る必要があります。歯は削ることで、支台歯のエナメル質が失われ、歯の寿命が短くなる可能性があります。
また、削られた支台歯は、将来的に虫歯や歯周病のリスクが高くなる場合があります。支台歯が虫歯や歯周病でダメになってしまうと、さらに隣の歯を削って長いブリッジが必要になります。
このように連鎖的に支台歯を失い、気付いた時にはお口の中に健康な歯がほとんど残っていないというケースも少なくありません。
その点ではインプラントは隣の健康な歯を削る必要がなく、歯を作ることができるので、周りの歯に負担をかけることはありません。
失った1本の歯をブリッジにするかインプラントにするかの選択によって、お口の将来が大きく左右されることもあるということは、ぜひ知っておいて頂きたいところです。
その点ではインプラントは隣の健康な歯を削る必要がなく、歯を作ることができるので、周りの歯に負担をかけることはありません。
インプラント治療の方法の特徴としては、必ず外科処置が必要になるという点にあります。チタン製のネジを植えるために、局所麻酔での手術が必要になります。
一方、ブリッジに関しては手術をせずに、両隣の歯を削って作ります。
治療期間に関しては、インプラント治療はご自身の顎の骨とインプラント体が結合(骨結合)する期間が必要となるため、一般的には待時期間のある治療になります。平均でも3ヶ月から6ヶ月程度かかることが多いです。
ブリッジに関しては、早ければ歯を削って型取りをすれば1週間から2週間で完了する治療になります。
インプラント治療は日本の健康保険でカバーされない治療であるため、自費診療になります。
費用はそのクリニックによって異なりますが、大体30万円〜45万円くらいが相場になります。追加で骨を足すなど付随する手術が必要な場合は、費用は変わります。
ブリッジは健康保険で作ることができる銀歯によるブリッジと、自費診療で作るセラミックなどによるブリッジとがあります。
ブリッジの費用はその歯の本数に比例しますが、銀歯のブリッジであれば健康保険を利用すると2万円から3万円程度掛かり、セラミックなどの自費のものであれば10万円から15万円程度が相場になります。
インプラントブリッジの場合は柱となるインプラントの部分の費用とポンティックと呼ばれるダミーの歯の部分の費用がかかります。
例えば、3本の歯の欠損に対して、インプラントブリッジで治療を行う場合にはインプラントの柱が2本分(30万円〜45万円×2本)とダミーの歯が1本(10万円程度)で70万円から100万円程度かかります。
3本の歯の欠損に3本インプラントを入れる(90万円〜135万円)よりは、費用的には少し抑えることができます。
インプラントの寿命については、90%を超えるインプラントが10年経っても問題なく使用できたという報告があり、きちんとメインテナンスをしていれば10年以上使用し続けることも十分に可能です。
また近年イタリアで発表されたインプラントの寿命に関する論文では、きちんと管理されたインプラントは20年以上でも90%を超えていたという報告もあるので、素晴らしい治療法だと思います。
ブリッジの寿命は、その柱になっている歯が神経のない歯か神経の残っている歯かによって大きく変わります。歯の神経を取ってしまっている歯は割れ易いので、ブリッジの柱になっていると、割れてしまう可能性が高くなります。
一般的には健康保険のブリッジの寿命は7年から8年程度、自費のブリッジでも10年程度と言われているので、寿命に関してはインプラントの方が長い可能性があります。
インプラントであってもブリッジであってもメインテナンスは欠かせません。定期的な検診を受診することで、インプラントの周りに炎症が起きていないか、ブリッジの柱の歯が虫歯になっていないかのチェックを受ける必要があります。
インプラントは虫歯にはなりませんが、歯周病に似た状態(インプラント周囲炎)にはなってしまうので、丁寧にインプラント周囲を清掃し、定期的には歯科医院でメインテナンスやレントゲンを撮影を行う必要があります。
ブリッジの場合は、複数本の歯が連結されているので、糸ようじ(デンタルロス)が使えません。そこで、歯ブラシだけではなく歯間ブラシなど様々な歯ブラシを使って磨かないと支えの歯が虫歯になってしまいます。
歯の神経がない状態では痛みも感じないので、気がついた時にはかなり重度の虫歯になっていることもよくあります。つまり、インプラントもブリッジもメインテナンスは必須のものですので、定期検診は必須になります。
ご覧いただいた通り、インプラントとブリッジでは費用や治療期間、耐久性やメンテナンスなど、さまざまな点での違いがあります。
続いてそれぞれのメリットとデメリットについて、簡単にご説明します。
インプラント治療のメリットとしては、ブリッジと違い両隣の歯を削る必要がないという点にあります。両隣の歯が健康な歯であったとしても、ブリッジを作製するためには削る必要があるので、歯の寿命を短くしてしまいます。
また、その他のメリットとしてはブリッジと異なり、残っている歯にかかる負担を大きく減らすことができる点です。
ブリッジはどうしても残っている歯に負担を掛けながら歯列を回復する治療法になりますが、インプラントはその他の残存している歯の負担を軽減し、インプラントが新たな柱として歯列を支えてくれるので、大きな恩恵があります。
インプラント治療のデメリットとしては、外科処置が必要になるという点です。チタン製のネジを入れる際には必ず手術が必要となりますので、手術が怖い患者様からは敬遠されることもあると思います。
当院では手術が怖い患者様へは、笑気麻酔や静脈内鎮静を併用しての手術を行うことで、患者様の負担はかなり抑えることができますので、是非ご検討ください。
次のデメリットとして、治療期間が比較的長くなってしまう点も挙げられます。ブリッジと違い、インプラントとご自身の顎の骨が骨接合をするまでの待ち時間が必要です。
最後のデメリットとしては、インプラント治療は健康保険ではカバーされていない治療になるため、銀歯のブリッジと比較すると値段が高くなる点にあります。
ただ、この費用も両隣の健康な歯を守ることができるのであれば、十分に価値のあることだと思います。
ブリッジのメリットはインプラント治療と違い、手術が不要であることが挙げられます。両隣の歯の神経が残っていれば局所麻酔は行いますが、手術ではないので、短時間で終えることができます。
また日本では銀歯でのブリッジは健康保険で認められているため、比較的安く歯を入れることができます。
ただ、健康保険の銀歯ブリッジは型取りを行う材料も精密ではないため、最終的には多少のズレも歯科用セメントで合着して補正するため、あまり精度が良い治療とは呼べません。
ブリッジのデメリットは第一に健康な歯を削ることになります。ブリッジを作製するには大幅に歯を削る必要がありますので、歯の寿命を短くしてしまいます。
100歩譲って、もしも両隣に既に銀歯が入っていればその銀歯を外してブリッジにすることは可能になりますが、次は第二のデメリットが関わってきます。
第二のデメリットとして、両隣の歯に相当な負担が掛かってしまうという点です。残っている歯にどんどん負担をかけながら歯を作るのがブリッジなので、次には支えになっている歯が壊れてしまう可能性が高くなります。
その歯が歯の神経の処置をしている歯であれば、尚更破折の可能性は高くなります。
上記で読んでいただいたように、インプラント治療もブリッジもそれぞれにメリットとデメリットがあり、全身状態や口腔内の状態は患者様によって様々なので、それぞれに検討していくことが大切です。
また患者様の歯に対する価値観もとても重要になります。
一番大切なのはご自身の歯に対する価値観をしっかりお持ちの方です。インプラント治療は費用も期間も掛かりやすい治療法なので、じっくりと治療に向き合う必要があります。
お仕事やご家庭が忙しくて、最短で治療を終わらせたいなどとご希望のある方は、もしかするとブリッジの方がご希望に答えられるかもしれません。
またこれ以上歯を失いたくないなと感じられた方にもインプラント治療はお勧めです。両隣の歯を傷つけることなく、歯を作ることができるので、ベストな治療法になると思います。
治療期間に関しては比較的長くはなりますが、抜歯と共にインプラントを埋入するなど、治療期間を短縮するなど様々な方法がありますので、是非一度ご相談ください。
ブリッジをお勧めする方は、数週間での治療終了を希望される、お急ぎの方になります。ブリッジであれば、インプラントと比較するとそこまで時間は掛かりません。
また全身的な状態で、手術が難しい方も中にはいらっしゃいますので、お身体の体調的に外科処置を避けた方が良い方はブリッジの方がお勧めです。
最後に、10代など若すぎる患者様へはあまりインプラント治療はお勧めしておりません。インプラント治療は日本で本格的に導入されてからまだ40年程度の歴史しかありません。つまり10代でインプラント治療を受けた場合に、その患者様が50歳になった時にそのインプラントが問題なく機能しているかどうかは保証が難しいです。
つまり、インプラント治療はできる限り遅い年齢で受けていただきたい治療なので、歯の移植や矯正治療でスペースを埋めるなど様々な別の方法を検討する必要があります。
当院では若い患者様の歯の欠損に対して、親知らずを移植する事が成功し、インプラント治療を回避する事ができた症例があるので、ぜひご参照ください。
当院にはブリッジからインプラント治療に変更する患者様はたくさんいらっしゃいます。なぜなら、健康保険があり比較的安価で歯科治療を受けられる日本では、歯を失った時の第一選択としてとりあえずブリッジ治療を選択する患者様が多いため、将来的にブリッジからインプラントに変更するケースが尚更多いのだと思います。
現代では、口腔内への関心も高まってきていますが、それでも歯を失って、第一選択としてインプラントを選択される患者様は、かなり歯への意識をしっかりとお持ちの方だと思います。
現実にはブリッジをしていた部分が壊れ始めて、もうこれ以上歯を失いたくないと危機感を持たれた方がインプラント治療を検討されて来られることが多いです。
長期間ブリッジが入っていると、その部分の骨が萎縮してしまい、骨がなくてインプラントが他院ではできないと宣告された方も、当院では骨の再生とインプラント治療を行っておりますので、是非お問合せください。
一言にブリッジやインプラントと言っても、失っている歯の本数や、周りの歯の状態、また患者様の歯に対する価値観などによっても治療方法は多岐に渡ります。
歯を失った原因を明らかにすることで、その患者様がブリッジをしても大丈夫なのか、もしくは残っている他の歯を守っていくためにはインプラント選択するべきなのかは慎重に判断をしなければなりません。
患者様が治療にかけることができる時間や費用をしっかりとお伺いした上で、ベストな治療をご提案できるように当院ではスタッフ一同取り組んでおります。
どのような治療のゴールがあなたにとって本当に必要なのかを一緒に探しましょう。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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