24/11/19
入れ歯とインプラント治療の違いは?併用する治療法や費用についても解説
抜歯即時埋入というインプラント治療の手法をご存知ですか?
当院では患者様になるべく抜歯をされる前のご来院をお勧めしておりますが、その理由の一つが『抜歯即時埋入』が選択できるという点にあります。
抜歯即時埋入とはその名の通り、抜歯と同時にインプラントを埋入する方法です。歯を抜いてしばらく経過してからインプラントを埋入するのと比べて、抜歯即時埋入にはさまざまな利点があり、当院は積極的に行なっております。
インプラントは外科手術を伴うため、患者様のご負担が比較的大きな治療ですので、患者様のご負担軽減につながる抜歯即時インプラントを一人でも多くの方に知っていただきたいと考えております。
そこでこのページでは、抜歯即時埋入によるインプラント治療のメリットやデメリットなどを、インプラント治療を専門としているLOHASデンタルクリニック院長の福居が解説します。
目次
一般的なインプラント治療とは、まず抜歯が必要になってしまった歯の抜歯を行います。そして、抜歯を行なった部位の骨がある程度治癒することを待って(約2ヶ月〜3ヶ月程度)骨が治った部位にインプラント治療をすることになります。
しかし、この治療法のデメリットとして、抜歯後に待つ期間が発生するため、治療期間が長くなってしまう点にあります。
このデメリットを克服する治療法として「抜歯即時埋入」という方法が用いられるようになりました。
この治療法は抜歯をすると同時にインプラントを埋入する治療法で、この術式を選択することで、治療期間を短くすることができます。
治療期間以外にもこの術式を選択するメリットがありますが、もちろんデメリットもあるので解説をしていきます。
抜歯即時埋入の成功率には様々な研究がなされています。成功率は90%以上を報告している論文が多いですが、中には40%と報告している論文もあり、適応症をきちんと選択して行わなければ、通常のインプラント埋入と比べて、失敗するリスクが高くなる可能性があることが示されています。
参考文献: https://www.mdpi.com/2673-1592/5/2/28
上記の論文に書いてあるように、どんな症例でも適応できる方法ではありません。症例をきちんと選ばなければ、失敗につながってしまい結果的に治療期間が長くなってしまうこともあるため、その患者様それぞれに一番良い治療方法を選択することがとても大切になります。
インプラントの埋入のタイミングはネジを支える周りの組織(骨や歯茎)の状態によって分類されます。どの方法が一番良いということはなく、それぞれにメリットとデメリットがあります。
チューリッヒ大学のChristoph H. F. Hämmerle教授らはこの抜歯後のインプラント埋入のタイミングについて細かく
抜歯した当日にインプラントが埋入されます。インプラントがある程度固定されるだけの骨があり、周りの組織に感染がないことが望ましいです。
抜歯後4週間から8週間のタイミングにインプラント手術を行う方法です。
この期間で歯茎が治っていることがポイントになります。骨はまだしっかりと治っていないタイミングでのインプラント埋入になります。
抜歯後3ヶ月から4ヶ月のタイミングにインプラント手術を行う方法です。
歯茎はしっかりと治癒し、骨はまだ未成熟ですが治癒途中の状態でのインプラント治療になります。
抜歯後4ヶ月以降でしっかりと骨が治ったタイミングでのインプラント治療になります。歯を抜いた時の骨の状態によって4ヶ月の場合もありますし、6ヶ月ほど待つこともあります。
参考文献: https://www.iti.org/iti-academy-consensus/CC3_Group1_Haemmerle_et_al.pdf
症例を選べば、とてもメリットの大きい抜歯即時埋入ですが、具体的にどのようなメリット・デメリットがあるかを説明していきます。
抜歯後の治癒待ち期間がないため、3ヶ月から半年ほど治療期間を短くできる可能性があります。
抜歯後には骨が治る過程で骨は多少吸収してしまうことが証明されています。抜歯即時埋入を行うことでその吸収してしまうボリュームを減らすことができる可能性があり、結果的に待時埋入の時に必要となる骨造成を回避できる可能性があります。
抜歯した骨の穴にインプラントの穴を開けるため、基本的には歯茎を切開せずに治療ができることが多い治療法になります。そのため、患者様の侵襲が抜歯と同程度に抑えられるため、結果的に術後に痛みが強くないことが多いです。
抜歯をするときの骨や歯茎の状態にもよりますが、抜歯後に周囲の骨や歯茎は3〜4割ほど吸収してしまうことは分かっています。これは歯を失うことにより周りの組織への血流が乏しくなってしまうことが原因になります。しかし、同時にインプラントを埋入することで周りの組織をサポートができるので、骨の吸収を軽減させることができ、歯茎が痩せることも最小限に留めることができます。
きちんと適応症を考えて抜歯即時埋入を行うことで、上記に示すように治療期間も短くなり、手術の侵襲も抑えることができるため、結果的に患者様の心身への負担を軽減することができると考えます。
抜歯即時埋入を成功に導くには手術前にきちんとした診断と手術中の手技が大切になります。まずは抜歯の際に周りの組織を傷つけることなく丁寧に抜歯する必要があるため、難易度は高くなります。抜歯する部位に感染している組織がある場合は徹底的に感染部位を除去しなければ、その後のインプラントに感染が及んでしまうため、要注意です。
抜歯即時埋入の最低条件としてインプラントが安定できるだけの最低限の骨が残っているという点が重要になります。この最低上限が得られなければ、インプラントは安定せず失敗してしまいます。失敗すると結果的に治療期間は長くなり、患者様にかかる負担は多くなるので、適切な判断が求められます。
そもそも抜歯になるということは、その部分の骨や歯茎に細菌感染が起きている可能性があります。この感染をきちんとコントロールできなければ、インプラントに悪影響が出てしまいます。この細菌感染のコントロールが成功への鍵となります。
まず私が抜歯即時埋入が可能かどうかを判断する一つ目の基準はインプラント体が安定できるだけの健康な骨が残っているかです。
インプラント治療を行う上で、上の奥歯であれば「上顎洞」、下の奥歯であれば「神経」など、要注意な神経や血管などが存在します。これらの制限のある中で、安全な位置にインプラントを置いた時にインプラント体が安定できるような骨がきちんと存在しているかが大切な項目になります。
その部分に健康でしっかりとした骨が残っていることがまず大切な条件になります。
二つ目の基準は外側にどの程度骨が残っているかを大切にします。
外側に骨がない部分にインプラントを入れても、その部分に骨が再生してくることはありません。つまり、ある程度骨の壁が残っている症例に抜歯即時インプラント治療を行うことが成功への鍵と考えられます。
この患者様は50代の女性で、歯茎が腫れて痛いとのことで来院されました。
レントゲンなどでその歯を細かく診断すると、歯が縦にヒビが入っており再治療をしても治癒させることは難しいことを患者様に伝えました。
ただ、周囲の骨の吸収はあまりなく、抜歯即時埋入が可能な状態であったため、その旨をお伝えし、インプラント治療に同意を得ました。
手術は抜歯と同時にサージカルガイド(手術用マウスピース)を用いて、予定していた埋入ポジションにインプラントを埋入しました。
術後のレントゲンでも問題はなく、術後4ヶ月後に歯が入りました。
その後の経過も問題なく、現在も快適に使用していただいています。
この症例はこちらのブログに詳細に記載しております。
>>抜歯と同時にインプラントを埋入する(抜歯即時埋入)ことで、全部で1回の手術で歯が入り治療期間が短縮できた症例
はじめに精密検査をさせていただき、抜歯が必要な歯だけでなくお口の中全体の状態を確認していきます。
「本当に抜歯が必要なのか」
「なぜ抜歯が必要になってしまったのか」
「他の歯のコンディションは大丈夫なのか」
などを診断し、今後これ以上インプラントをしなくても良いようにきちんと診断していきます。
その上で、どうしても抜歯をしてインプラント治療が必要な場合には、抜歯即時埋入が可能かどうかを診断します。
具体的にはインプラントシミュレーションソフトに患者様のCTデータを取り込んで、実際にインプラントを置いてみるようなシミュレーションを行います。
その上で埋入されるインプラントが固定を得られるだけの健康は骨が残っているかを診断し、適応症例かどうかを判断していきます。
抜歯即時埋入の適応と判断されれば、手術の計画を立てていきます。何mmのインプラントをどの深さに埋入するかなどを細かく診断し、サージカルガイド(手術用マウスピース)が必要かどうかなどを含めて治療計画を立てます。
そしていよいよ手術当日です。
清潔な環境で手術を行います。まず抜歯が必要な歯を愛護的に抜歯します。必要があれば歯を細かく分割して抜歯を行い、インプラントに大切な骨をできる限り守って抜歯を行います。
その次にインプラントのドリル・埋入を順次行います。抜歯をした部位の骨は平らではないため、ドリルが滑ってしまうこともあり要注意になります。
慎重に理想的な位置にドリルを行い、適正な深さにインプラントを埋入していきます。この時にインプラントの固定具合がとても大切になるので、コツが必要です。
インプラントが十分な固定を得られれば、あとは隙間に人工の骨を足して、キャプをセットして手術終了になります。
術後にレントゲン写真できちんと理想的な位置にインプラントが埋入されていることを確認します。
手術中にはしっかりと局所麻酔を使って手術を行うため痛みを感じられることはありません。
ただ、手術中の振動などは伝わってしまうので、手術に対する恐怖感が強い場合は点滴での静脈内鎮静や笑気を使った鎮静を併用していただくと緊張はほぐれます。
また術後には抜歯後と同じ程度の鈍い痛みは感じられると思いますので、しっかりと鎮痛剤を処方いたします。
抜歯後の時間が経過していたとしても、インプラント治療は可能です。
ただ、骨の状態がどうなっているかをきちんとレントゲンやCTで確認し、安全にインプラント治療が行えるかどうかの判断は必須になります。
抜歯即時埋入の場合、インプラントの固定が良好であれば下顎で3ヶ月〜4ヶ月、上顎では4ヶ月〜半年ほどで歯が入ります。
当院ではまず仮歯を作成し、清掃性や見た目、噛み合わせを最終調整した上でセラミックの歯をセットすることが大半です。
症例を選べば患者様へのメリットが大きな「抜歯即時埋入」ですが、選択を間違えてしまうと逆に治療期間が長くなる、やり直しの手術が必要になるなどのデメリットも出てきます。
歯を失った部位にできるだけ早く歯が欲しいという患者様のお気持ちも充分に分かりますが、この先長い期間使っていただきたインプラントなので、歯が入るまでの期間が数ヶ月伸びてしまったとしても、安全で確実な治療法を選択していただくことが、一番の患者様にとってのメリットになると考えています。
ですので当院では失敗するリスクが高くなるようであれば、より安全な術式を選択しております。
患者様それぞれの状況や口腔内の状態によって、どの治療法を選択することが一番良いかをきちんと判断した上で、患者様にご提案をできればと思っております。
歯を抜かなければならないと診断されたけれど、できれば抜歯即時でなるべく早く歯を入れたい方、メリット・デメリットをきちんとお伝えしますので、お気軽にご相談いただければと思います。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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