25/01/17
全部の歯をインプラントにする理由|デメリットや費用、具体的な方法について
『総入れ歯が合わないのでインプラントを考えているけれど、失敗は絶対に避けたい…』
『総入れ歯だと食事も楽しめないので、全部の歯をインプラントにしたい』
『全部の歯をインプラントにすると、何本入れないとダメなんでしょう?』
歯を失ってしまった患者様の治療として、現在では大変メジャーになりつつあるインプラント。費用はかかりますが、しっかり噛みごたえを感じられて、人気のある治療法です。
では、もしも全部の歯を失ってしまった場合、失った歯と同じ本数のインプラントが必要なのでしょうか?
実は、片顎で14本の歯をすべてインプラントにするということは、まずありません。では良く聞く『総インプラント』『全部の歯をインプラント』といった言葉は、どういう意味なのでしょうか?
このページでは、全部の歯をインプラントに置き換える際の具体的な治療方法や、そのメリット・デメリット、費用などについて、奈良県でインプラント治療を専門的に行っている、LOHASデンタルクリニック院長の福居が詳しく解説します。
目次
全部の歯を失ってしまった患者様の多くは、まず総入れ歯での治療を選択されます。
しかし、総入れ歯では十分な咀嚼力が得られないことや、違和感が強いことから、より噛みやすく違和感のない治療を求められた患者様が、「全部の歯をインプラントにするような治療=フルインプラントの治療」に辿り着かれる印象です。
当院でも「総入れ歯では思うように噛めない」「人前で食事をすることに抵抗がある」といった悩みを抱える患者様から、インプラント治療についてのご相談を多くいただいています。
全部の歯のインプラント治療は、以下のような悩みをお持ちの患者様に特におすすめの治療法です。
まず、総入れ歯での生活に不満を感じている方です。
義歯(入れ歯)の特徴として
が挙げられます。
ですので、上記に当てはまる患者様には、インプラント治療が有効だと思います。
また人前に立つ機会が多い方にも、インプラント治療がおすすめです。総入れ歯と比べて、インプラントは安定性が高く、会話の際にモゴモゴとしてしまったり、入れ歯が外れてしまうといった不安が軽減されます。さらに、入れ歯特有の違和感も少ないため、より自然な印象で人と接することができます。
ただし、インプラント治療を行うためには、一定の条件が必要です。例えば、顎の骨の状態が良好であること。また外科的な処置を伴う治療ですので、全身の健康状態に問題がないことなどが重要になります。さらに治療後に定期的なメンテナンスに通院していただくことが必須のため、その点がクリアできない患者様にはインプラント治療はおすすめできません。
実は、全部の歯をインプラントにする場合でも、失った歯と同じ本数のインプラントを埋入する必要はありません。むしろ、片顎14本すべての歯を1本1本インプラントにすることは、以下の理由から現実的ではありません。
まず、費用面での負担が非常に大きくなります。
1本のインプラント治療にかかる費用は40万円から50万円程度ですので、14本すべてをインプラントにすると、片顎だけで少なくとも500万円以上の費用がかかってしまいます。
次に、全ての歯を失った患者様はほとんどの場合、顎の骨が弱ってしまっているため、インプラントを埋入できない箇所が生まれることが多いです。
顎の骨の丈夫な場所を選んでインプラントを埋入することはできても、元々の歯があった箇所全てにインプラントを埋入できるほど、骨が健康的な状態で維持できている患者様は非常に稀です。
さらに、14本ものインプラントを埋入するとなると、手術の体への負担も非常に大きくなります。14本すべてをインプラントにする場合、手術回数も増え、治療期間も長期化してしまいます。
仮に上の①〜③をクリアしたとしても、治療後のメインテナンスが非常に複雑になります。
私の考えとしては必要最小限のインプラントの本数で、治療費用も抑えながら、長持ちする計画を選択することになります。
そのため、近年では4本から8本程度のインプラントで片顎全体の歯を支えるような治療法(オールオン4、6、8など)が主流となっています。これにより、治療費用や手術の負担を抑えながら、十分な機能と審美性を得ることができます。
全部の歯をインプラントで治療する場合、大きく分けて2つの方法があります。
それぞれの特徴や費用は大きく異なりますので、患者様の状態や希望に合わせて最適な治療法を選択することが重要です。
オールオンXの”X”とはインプラントの本数を示します。片顎の治療に用いるインプラント本数でそれぞれ呼び名が「オールオン4」や「オールオン6」などと呼ばれます。
オールオン4は、片顎4本のインプラントで12本分の歯を支える治療法です。インプラントを骨の残っている部位に特殊な角度で埋入することで、少ない本数でも十分な強度と安定性を実現しています。
当院でもオールオン4は多くの患者様が希望されます。
利点としては、インプラントの本数が4本で済むため、手術の負担が比較的少なくて済みます。また、オールオン4は手術当日に仮歯が入るため、その日からお食事を楽しんでいただけます。
ただし、オールオン4は万能な治療法ではありません。
特に噛む力が強い方や、骨の状態が良くない方は、4本のインプラントで12本の歯を支えることが難しいことがあります。このような場合には、インプラント6本を使用するオールオン6や、8本を使用するオールオン8といった治療法もございます。
このことにより長持ちするような治療プランをご提案することが大切だと思っております。
また患者様の年齢や骨の状態に合わせて、骨の再生療法を併用しながら理想的な位置にインプラントを埋入するか、患者様の骨のある部分に角度を変えてインプラントを埋入するかは決定します。
術前の計画が非常に重要になる治療法です。
オールオン4の治療費用の相場ですが、片顎で約200万円〜300万円程度が一般的です。概算ではありますが、内訳としてはインプラント1本あたり20万円〜30万円が4本分、インプラントの上部構造の人工歯12本分が約100万円前後、といった形になります。この上部構造物に用いられる素材などによっても治療費用は異なります。
インプラントオーバーデンチャーは、2本~4本程度のインプラントを固定源として、入れ歯を支える治療法です。入れ歯の着脱が可能なため、オールオン4と比較した際に清掃性が非常に高い点が魅力です。
インプラントを使用しない通常の総入れ歯と比べ、安定性が格段に高くなり、使用するインプラントの本数が少ないことでオールオン4よりも費用を抑えることができます。
特に、以下のような患者様に適した治療法です。
インプラントオーバーデンチャーはあくまでも入れ歯型の治療のため、オールオン4と比べると、安定性や噛み心地は少し劣ります。とはいえあくまでも比較した場合であり、インプラントオーバーデンチャーで治療を受けた方が、安定性や噛み心地に不満を感じているという話は、ほとんど聞いたことがありません。
インプラントオーバーデンチャーの治療費用の相場は、使用するインプラントが2本の場合で、片顎約100万円〜120万円程です。費用の内訳は、インプラント2本分の費用と、インプラントオーバーデンチャー用の入れ歯の制作費用となります。
ただし患者様がお持ちの入れ歯を調整して転用できる場合には、さらに費用を抑えられることもございます。
当院では、これら2つの治療法の中から、患者様の口腔内の状態、ご年齢、生活習慣、ご予算など総合的に考慮して、最適な治療法をご提案しています。また、どの治療法を選択する場合でも、術前の詳細な検査と治療計画の立案を行い、安全で確実な治療を心がけています。
全部の歯をインプラントにする治療は、なにより患者様の生活の質の向上に役立ちます。
当院に通院される患者様からも、治療後の生活の変化について、多くの喜びの声をいただいています。
具体的には以下のようなメリットがございます。
以下でご説明いたします。
インプラント治療の大きな特徴は、見た目の自然さです。特に前歯部分については、天然歯と見分けがつかないほどの仕上がりを実現することができます。
当院では、患者様お一人おひとりの口元や表情に合わせて、最適な形状や色調を選択します。また、歯と歯肉の境目の形状にもこだわり、できる限り自然な見た目を追求しています。
総入れ歯の場合、歯肉部分が厚くなりがちで不自然な印象になることがありますが、インプラント治療では、より薄く自然な形状を実現できます。さらに、入れ歯のように笑った時に金具が見えてしまう心配もありません。
これはインプラントオーバーデンチャーも同様で、インプラントオーバーデンチャーは入れ歯を使用するものの、固定源にインプラントを使用するため目立つ金具は必要なく、金具が見えてしまうような心配はございません。
インプラント治療後、多くの患者様が『久しぶりに固いものが噛めるようになった』『食事が本当に楽しくなった』とおっしゃいます。
これは、インプラントが顎の骨に直接固定されているため、天然歯に近い噛み心地が得られるためです。特にオールオン4やインプラントブリッジなどの固定式の場合、入れ歯と比べて咀嚼力が大幅に向上します。
具体的には、以下のような変化を実感される方が多いです。
まず、食べ物本来の食感を楽しめるようになります。総入れ歯の場合、上あごの部分が厚くなるため味覚が低下しやすいのですが、インプラントではそういった問題が少なくなります。
また、食事中の違和感や不安も大きく軽減されます。入れ歯のように外れる心配がないため、人前での食事も楽しめるようになります。
インプラントオーバーデンチャーの場合も、通常の総入れ歯と比べて噛み心地を感じやすく、床の部分を薄く作ることができるためお食事の温度をより感じやすくなります。
インプラント治療では、口腔内で天然歯とほぼ同様の形状を再現できるため、自然な発音が可能です。
特に、総入れ歯で問題になりやすい「サ行」や「タ行」の発音も、インプラントであれば比較的スムーズです。また、会話中に入れ歯がカタカタと音を立てるような心配もありません。
治療直後は若干の違和感を感じて話しにくいと言われる方もおられますが、1ヶ月程あれば皆様お口が健康だった頃と同様に喋れるようになったと喜んでくださいます。
歯を失うと、使わなくなった部分の顎の骨が徐々に減少していきます。これは「骨吸収」と呼ばれる現象で、特に総入れ歯の場合、年々骨が痩せていくため、定期的な入れ歯の調整が必要になります。
一方、インプラント治療では、人工歯根が顎の骨に直接埋め込まれるため、天然歯の歯根のように骨に適度な刺激を与えることができます。その結果、骨の減少を抑制する効果が期待できます。
これは見た目の面でも重要です。顎の骨が減少すると、歯茎が下がってきたり、顔の形が変化してしまう可能性がありますが、インプラント治療によってそのリスクを軽減することができます。
インプラント治療は多くのメリットがある一方で、いくつか注意点やデメリットもあります。
治療を検討される際には、これらの点もしっかりと理解した上でご判断いただくことが大切です。
インプラント治療後に最も気をつけていただきたいのが、インプラントの歯周病と呼ばれる『インプラント周囲炎』です。
これは歯周病に似た症状で、重症化するとインプラントの脱落につながる恐れもあります。天然の歯には歯根膜と呼ばれる歯と骨の間のバリアーのような組織がありますが、インプラントにはこの組織が存在しないため、歯周病が進行しやすい傾向にあります。
特に、オールオン4など着脱のできない固定式の場合、人工歯の下部に食べ物が詰まりやすく、清掃が難しい場合があり、注意が必要です。インプラントオーバーデンチャーは着脱が可能で清掃性が高く、これらの治療と比べると歯周病のリスクは低くなります。とはいえインプラントが歯周病に弱い点は同様ですので、定期的な歯科医院でのメンテナンスや徹底的なセルフケアは必須です。
当院では、ご自身での清掃のしやすい上部構造物を作製し、治療後もケア方法について詳しく説明し、専用の清掃道具の使い方もお伝えしています。また、定期的なメンテナンスを通じて、トラブルの早期発見・予防にも努めております。
全部の歯のインプラント治療、特にオールオン4などの高度な治療は、専門的な知識と技術、そして経験が必要です。そのため治療を受けられる歯科医院の数が非常に少なくなります。
また、治療後のメンテナンスや何か問題が起きた際の対応についても、専門的な知識を持った医院での対応が必要となります。
特に重要なのは以下の点です。
当院にお越しになる患者様の中には、
『他院でインプラント治療を受けたけれど、医院が廃業してしまい、ずっとメンテナンスを受けれていなかった』
という方もおられます。
当院の院長の福居はインプラント治療の専門医ですので、最新の設備と技術を用いて安全な治療を提供しております。また治療後のサポート体制も充実しております。
患者様に安心して治療を受けていただき、その後のメンテナンスにもしっかりと通っていただくことが大切ですので、治療環境を整えて安心して通っていただける医院造りを心がけております。
インプラント治療は保険適用外の治療となるため、全額自己負担となります。特に全部の歯のインプラント治療の場合、総額で数百万円の費用が必要となります。
具体的な費用の目安は以下の通りです。
さらに、骨造成などの追加治療が必要な場合は、それらの費用も別途発生します。また、治療後の定期的なメンテナンス費用も考慮する必要があります。
ここまで、全部の歯のインプラント治療について詳しく解説してきました。最後にもう一度、重要なポイントを整理します。
全部の歯のインプラント治療では、片顎14本すべてをインプラントにする必要はありません。むしろ、オールオン4やインプラントオーバーデンチャーなど、なるべく少ない本数のインプラントで、患者様の心身と経済的な負担をなるべく減らせるような治療法が主流となっています。
全部の歯をインプラントにするような治療には、以下のようなメリットがあります。
ただし、歯周病のリスクがある点や、治療に対応できる歯科医院が少ない点、全額自己負担となるため総入れ歯と比べて高額な治療費用が必要になる点にはご注意ください。
当院では、インプラント治療の専門家である院長の福居が丁寧な診査・診断を行い、患者様お一人おひとりに最適な治療法をご提案しています。まずは無料カウンセリングにて、お悩みをご相談ください。経験豊富な院長が、患者様の状態や希望を詳しくお伺いした上で、最適な治療プランをご提案させていただきます。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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