24/11/19
入れ歯とインプラント治療の違いは?併用する治療法や費用についても解説
目次
当院にも「歯がグラグラしてきたので診て欲しくてきました」とおっしゃってきてくださる患者様がいらっしゃいます。
歯が揺れ始めるにはさまざまな理由が挙げられますが、揺れ具合や進行具合によって治療方法は異なります。
「最近少し歯の揺れが気になるかも…」という方には是非見ていただきたい内容になります。
一番多い原因は歯周病(歯槽膿漏)が原因で歯を支える周りの歯が溶けてしまうと、支えを失った歯はグラグラしてきます。歯周病は痛みが出ずに気がつくと進行してしまっていることがある病気(サイレントディジーズ(Silent Disease:静かなる病気)とも表現される)なので注意が必要です。
歯ぎしりや食いしばりなどの習慣が原因となっている場合が多くなります。噛み合わせの力が強すぎて、健康な歯も揺れてくることがあります。この「噛み合わせの力」が原因の場合は噛み合わせの微調整や、マウスピースなどを使った治療をすることで、力のコントロールができれば歯の揺れは酷くならないように治療することができます。
しかし、歯周病が原因の場合は要注意です。「歯の揺れ」は比較的進行した歯周病(重症)な時に出てくる症状なので、ちょっと危険なサインかもしれません。
もしも、痛みがなくても歯の揺れを自覚することがあれば、なるべく早く歯科医院を受診して、歯周病の検査を受けましょう。歯周病は基本的には進行してしまう病気になります。様子を見ているだけでは良くならないことも多いです。
一度検査を受けて、どういった治療の選択肢があるかをきちんと診断してただきましょう。
当院では一般的に調べない口腔内の細菌の状態についてもPCR法を使って検査を行い、患者様の歯周病のリスクの診断をしております。当院の精密検査の内容についてはこちらをご参照ください。
初期歯周病であれば歯の揺れが出ることは少ないですが、噛み合わせが原因で初期段階でも歯が揺れてくることがあります。歯の過剰な干渉は歯周病を助長する原因となるので、噛み合わせの調整やマウスピースを用いた咬合力のコントロールなど治療をお勧めします。
中等度まで進行してしまうと、本格的に歯周病治療を行わなけらば悪化してしまうケースが多くなります。一般的なプラークや歯石をとるような治療から、深い部分に歯石がついているようであれば歯周外科手術、もしくは骨が溶けてしまっているような場合には骨の再生療法を行なった方が良いような症例もあります。どのような処置も進行してしまうまでに治療を積極的に行うことで改善する可能性は高くなります。
重度まで進行してしまうと「抜歯」を含めた治療方法を検討しなければならなくなります。つまり歯周病の治療を行なうことでより現状より改善するのか、もしくは改善しないのであれば抜歯をしてその部位をどのように補うかを考える必要が出てきます。
患者様のお気持ちとしては、揺れていても痛みのない歯であればできるかぎり抜かずに置いておきたいというの希望が強いと思いますが、置いておくことによるデメリットも十分に理解する必要があります。
グラグラの歯を残しておくメリットはあまり見当たりませんが、歯は抜歯をしてしまうと「おしまい」なので、患者様自身が納得して抜歯を決心してから抜歯をした方が良いと考えております。
納得されていない状態で歯科医師の言われるがまま抜歯をしてしまうと、患者様のお気持ちの中に後悔が残ってしまうことがあります。
ですので、歯を残しておくことのメリットがあまりないことを十分に理解された上で抜歯を受けられることをお勧めいたします。
グラグラの歯の周囲にはバイ菌が付着していたり、常に炎症がある状態になるので少しずつですが周りの骨を溶かし、吸収してしまします。歯を支えている骨が極端に吸収してしまうと、次の治療(入れ歯やブリッジ、インプラント)が難しくなってしまうことがあります。
また骨が吸収している部分が広がってていくと隣接する歯にも炎症が広がってしまうことがあります。つまり、グラグラしている歯を残しておくことで、周囲の歯にも影響を及ぼしてしまうことがあります。
残念ながら歯の保存が難しくなってしまった場合、次に守らなければならないのは歯を支えている「骨」になります。なぜなら骨が吸収して陥没してしまうと、入れ歯も安定することは難しいですし、ブリッジも作成が困難になります。
総入れ歯の場合は支えになる歯がないので、歯茎に入れ歯を吸着させて(吸盤のように)安定させます。しかし骨(土手の部分)が全くなくなってしまうと吸着を得られなくなるので、入れ歯の安定が悪くなります。
ブリッジの場合は歯がなくなった部分をポンティックと呼ばれるダミーの歯で補います。その部分が陥没してしまうととても歯磨きの難しい状態になってしまうため、支えになっている両隣の歯が虫歯になるリスクが高くなります。
インプラント治療の場合は、まずは陥没した部分の骨を再生するところから治療をしなければならなくなります。インプラント周囲の骨を再生する治療(骨造成術)は可能ですが、骨を再生するにも限界はありますし、骨造成術をするにも患者様には金銭的にも身体的にも負担が増えます。
これらの理由からある程度のところで治療方針を切り替えて抜歯に舵を切った方が良いこともあります。
今では日本でもの知名度のあるインプラント治療ですが、やはり「高い」というイメージを持っている方が多いのではないでしょうか。
なぜ、インプラント治療が高いのか。これはインプラント治療高いのではなく他の歯の治療が安いのです。
日本には国民皆保険制度があるため、虫歯治療や歯周病治療は国の負担(患者様によって負担割合は異なります)を受けて治療をすることができます。しかし、インプラント治療や矯正治療(一部健康保険で負担されることもありますが)は自費診療となり、国の負担を受けることができません。このためインプラント治療は相対的に高額になります。
そして患者様はなるべく治療費用を安くしたいと考えるので、歯が揺れていたとしても相対的に高額なインプラン治療よりも歯を残していく健康保険内の治療を選択されることが多くなります。
逆に国民皆保険のないアメリカでは、治療をしても長く保たない歯は積極的に抜歯をして、インプラント治療に切り替えることが多いです。これは良くなる確率の低い歯の治療に費用をかけると高額になるので、より治療成績の良い治療を選択して、治療費用を抑えようとするためです。合理的なアメリカ人らしい考え方だと思います。この健康保険のルールの違いや価値観の違いが大きく反映されているようです。
また、日本には「8020運動(80歳で20本以上の歯を残す)」というものが1989年から国が推進しており、それによってご自身の歯を残すことが良いとされてきました。
この運動により2016年には8020を達成した方が半数を越えたとされています。この運動は超高齢社会の日本にとってはとても意味のある運動ですし、歯が残っていることで認知症の予防や食生活の改善が期待されます。
しかし、これはただただ20本の歯が残っていれば良いという話ではなくて20本の健康な歯が残っているという点が重要になります。すなわち、揺れている歯や折れている歯がたくさん残っていることは良いことはないですし、現在では歯の健康と体の健康についての研究がたくさんされているので、状態の悪い歯がたくさん残っていることで糖尿病や肺炎などにかかる確率が高くなるという研究結果が残っています。
つまり、残念ながらこの「8020運動」の歯を残すことだけに注目されており、健康な歯の状態を維持することは二の次になっているように感じます。
グラグラになった歯でもギリギリまでは使いたいという患者様の気持ちは、私も十分共感できますし、できることであれば、患者様の納得できるとことまでは抜かずに置いておきたいと思います。もちろん、歯の治療を行うことで揺れが改善する可能性がある歯であれば、抜かずに治療できればと思います。しかし、残念ながらグラグラの歯を残して良かったと思うことは今までの歯科医師の経験の中ではありませんでした。
しかし抜いてしまうとお終いなので、きちんと患者様にご説明して納得いただいた上で抜歯ができれば、次の治療に積極的に向かっていただけると考えております。
歯を残すメリットとデメリットをきちんとご理解していただき、治療方針を患者様と決めていければと思っておりますので、ご相談等ございましたお気軽にお問合せください。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
ご予約・お問い合わせ0742-93-8363
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