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news/ コラム「根管治療 vs 抜歯してインプラント」どちらを選ぶ?

コラム

「根管治療 vs 抜歯してインプラント」どちらを選ぶ?

「根管治療 vs 抜歯してインプラント」どちらを選ぶ?

『自分の歯は大切だけど、根管治療を受けても鈍い痛みが残っている』
『根管治療を受けるか、諦めて抜歯するか、どちらがいいでしょうか?』
『根管治療の成功率が低いって本当?』

虫歯が進行してしまった重度のケースでは、根管治療で歯を残す治療を行うか、抜歯してインプラントやブリッジなどで、失われた歯を補う治療を行うか選ぶことになります。

ご自身の歯を残せるに越したことはありませんから、ほとんどの方がまずは根管治療を検討されることだと思います。

しかし根管治療には、上記のような不安や疑問もあるかと思います。

そこでこのページでは、根管治療とインプラントそれぞれのメリットやデメリット、いつか歯がダメになるとしても根管治療を行う理由について、インプラント治療を専門としている奈良県のLOHASデンタルクリニック院長の福居が解説します。

目次

根管治療とは?

根管治療とは簡単に言うと”歯の神経を取り除く処置”になります。

虫歯が進行してしまい、歯の神経(歯髄)近くまで達してしまうと冷たいものが染みるなどの自覚症状が出てしまいます。

この症状が出てしまうと、歯髄に炎症が起こっているため、痛みを取るためには根管治療を行い、歯の神経を取ってしまう必要があります。

現在ではこの歯髄を残すために、覆髄法(バイタルパルプセラピー)や歯髄再生療法など様々な治療法が開発されています。

しかし残念ながら神経の保存ができない症例では、根管治療を行い、痛みのコントロールと口腔内の細菌が侵入することを防がなければなりません。

根管治療の成功に欠かせないラバーダム

この”根管治療”ですが、口腔内の細菌が侵入してしまうと治療の成功率が下がってしまうため、「ラバーダム防湿」と呼ばれるゴムのシートを用いて治療を行うことが推奨されています。

しかし、根管治療は日本の健康保険内で行うことができる治療であるため、手間が掛かり、治療にかかるコストが高くなってしまうラバーダム防湿の使用率は5.4%(2003年データ)と言われており、非常に低い数字になります。

参照:日本のラバーダム防湿に関する研究結果

つまり、日本での健康保険内での根管治療の成績はあまり好ましくない結果になります。

もちろん健康保険内の治療でもラバーダム防湿を行い、歯科用顕微鏡などを使いながら根管治療をされている先生方もいらっしゃいます。

しかし、根管治療は決して簡単な治療ではなく、特に前歯部より臼歯部は唾液の侵入も起こりやすく難易度の高い治療になるので、ラバーダム防湿を行った上できちんと治療をする方が成功率が高くなると考えられます。

根管治療のメリット

①自分の天然の歯を残すことができる

根管治療を行うことで、虫歯で小さくなってしまった歯にもクラウン(差し歯)を被せることで、噛む機能を回復することができます。

②神経の痛みを取り除くことができる

虫歯の痛みを経験されたことがある方は尋常ではない痛みを覚えてらっしゃると思いますが、炎症が歯髄にまで達してしまうと、とても不快な痛みを伴います。

この痛みを取るためには根管治療を行い、歯の神経を取ることによって、患者様は痛みから解放されます。

根管治療のデメリット

①歯を大きく削る必要がある

根管治療を行う時には、虫歯になっている部分の歯は全て削除する必要があります。

つまり神経を取る必要があるほど虫歯が進行している場合は、歯の頭の大部分がすでに虫歯で侵されていることが多いため、大幅に歯を削る必要があります。

そのため最終的には型取りを行い、金属やセラミックを用いてクラウンを作製する必要があります。

②歯の神経を抜くため歯が脆くなる

一昔前は歯の神経を取ることで歯への栄養が届かなくなるため、歯が割れやすくなると言われていました。

しかし、アメリカのミネソタ大学のReeh先生たちの研究結果では歯の神経を取ることが原因で脆くなるのではなく、歯の頭をたくさん削ることが原因で、歯は割れやすくなると言われています。

参照:根管治療と歯の破折に関する研究

ただ、虫歯に侵されている歯は削るしかないため、やはり歯の神経を取るほどの進行した虫歯に罹患した場合は、歯が脆くなることは避けられないようです。

③痛みを感じなくなるため再発に気付きにくい

歯の神経を取ることで、虫歯の痛みから解放されるというメリットは上記でお伝えしましたが、神経を取ってしまって以降は被せ物の中で虫歯が再発しても痛みを感じることはありません。

つまり、虫歯が再発したとしても原則的には痛みを感じることがないため、症状が出た時にはかなり虫歯が広がっていることが多いです。

特に日本の健康保険の差し歯で用いられる金属(金銀パラジウム合金)はセラミックなどに比べて虫歯が再発しやすいと言われており、金属の差し歯は装着後10年経つと、約50%の差し歯に虫歯の再発などが認められたという研究結果があります。

こういったことから、当院では根管治療後の歯に対しては虫歯の再発が起こりづらいセラミックを用いた被せ物を装着しています。

④不十分な根管治療が原因で感染を起こすことがある

根管治療は例えて言うなら「トンネル掃除」のようなものです。

トンネル(歯根)の中を”入り口”から”出口”まで徹底的に掃除をして、その中に感染が広がらないようにゴムのような薬で封鎖するという治療になります。

ただし、この治療を狭い口腔内で正確に行うことは非常に難しいです。

前歯はこのトンネルが1本だけのことが多いですが、奥歯に行くとトンネルが2本〜3本と非常に複雑な形態をしています。そのため、ゴムの薬がトンネルの出口まできちんと詰められず、死腔ができてしまうこともあります。

死腔の部分に細菌感染を起こしてしまうと、トンネルの外側(歯根の外側)に感染が波及してしまい、炎症で骨が溶けて膿が出てくることがあります。

この状態を「根尖性歯周炎」とよび、再度根管治療を行う必要がありますが、根管治療の再治療は非常に難易度が高くなるため、状況によっては治癒が望めない場合もあります。

⑤歯根破折があると歯を残すことが難しい

根管治療を受けるために大きく削られている歯は、根の破折リスクが非常に高くなります。破折する角度によっては保存ができなく、抜歯を余儀なくされるパターンもございます。

歯が保存の可能性があるような破折の仕方の場合は、当院では部分矯正を行い、歯の保存に努めておりますので、参考にしてください。

⑥長期的に歯を維持できないケースが多い

虫歯を除去し、根管治療を終え、被せ物が入るまでの一連の治療がラバーダム防湿をした上できちん緊密な根管充填が行われていれば長期的にも安心できます。

しかし、ラバーダム防湿を使っていなかったり、根管治療が不十分だと上記でご説明した根尖性歯周炎などが再発してしまうリスクが高くなります。

また歯の再治療には限界があり、回数を重ねるほどご自身の歯は薄くなり破折のリスクは高くなっていきます。

そのため、残念ながら様々な原因で抜歯に至ってしまう歯が出てきます。

参照:根尖性歯周炎の発生率に関する研究

インプラントとは?

インプラントのメリット

①機能性・審美性ともに天然の歯とほぼ変わらない

①機能性・審美性ともに天然の歯とほぼ変わらない

厳密には”歯”と”インプラント”は違いますが、患者様の使い心地はほぼ同等の結果が得られると思います。

機能的・審美的な結果を得るためには、綿密な治療プランを立ててインプラント治療に臨む必要がありますが、インプラントの有用性には疑う余地はありません。

②適切に使用すれば10年以上長持ちする

インプラントの寿命は10年でも90%を超えると言われており、きちんとメインテナンスをしていれば充分に恩恵を受けることができます。

また近年イタリアで発表されたインプラントの寿命に関する論文では、きちんと管理されたインプラントは20年以上でも90%を超えていたという報告もあるので、素晴らしい治療法だと思います。

③インプラントは虫歯にならないので再発のリスクがない

インプラントは虫歯になることはありません。つまり患者様の中で虫歯体質の方にとっては虫歯で抜歯に至ってしまった歯をインプラントに置き換えれば、その部分においては虫歯の再発は心配しなくても良いと言うことになります。

もちろん、残っているご自身の歯をきちんとメインテナンスしていく必要はありますが、インプラント自体が虫歯になることはないので、ご安心いただけると思います。

インプラントのデメリット

①治療ができないケースがある

インプラント治療ができないケースは、まずは全身的なご病気がある場合です。

重度の糖尿病を患っている、骨粗鬆症がかなり進行しているなどインプラント治療をお勧めできない方もいらっしゃいます。

骨が不足していてインプラントが難しい方も確かにいらっしゃいますが、不足している部分には骨を作ることができるので、何かしらの治療法はあります。

骨が不足している場合の治療に関してはこちらをご参照ください。

②保険診療では対応できない

日本の健康保険ではインプラント治療は基本的には対象外になっているため、自費診療となります。

健康保険で対応が可能なインプラント治療は

  • 病気や事故で顎の骨を広範囲に渡って失った方
  • 生まれつき1/3以上の顎の骨の欠損や形成不全がある方

が対象になりますので、歯周病や虫歯で失った歯に関しては自費診療となります。

③外科手術を伴うため心理的なハードルが高い

インプラント治療で避けて通れないのが、外科処置が必要になると言う点になります。

骨が充分に残っていれば、比較的低侵襲な治療ですが、骨がすでに溶けていると追加の処置が必要となりますので、その場合は外科的な侵襲が大きくなる傾向にあるため、患者様にとっても不安はあるかもしれません。

当院ではあらゆる治療に対応できる準備を整え、手術が怖い方も静脈内鎮静法(寝ながらの治療)で対応可能ですので、ぜひ一度お問い合わせください。

④インプラントも永久に保つわけではない

上記のメリットでインプラントは10年以上は保つといったご説明をしましたが、これはきちんと治療計画を立てた上で、整った環境でインプラント治療を行った場合のお話になります。

また、治療後の定期的なメインテナンスやレントゲン撮影などは欠かせないので、こういったことを省いてしまうと、インプラントの寿命は短くなってしまいます。

患者様にとってはインプラントは歯が入ると治療は終了だと思いがちですが、治療後にはその状態を維持していくためのメインテナンスは必要不可欠になります。

車でも車検が必要なように、毎日口腔内で使うことになるインプラントなので、定期的にメインテナンスを行なって、長期間使っていただけると幸いです。

根管治療とインプラントの比較

根管治療とインプラント、それぞれのメリットやデメリットはご理解いただけましたか?

ここからは、根管治療とインプラントについて、以下の3つのポイントで比較します。

  • 痛みの有無について
  • 治療期間について
  • 費用について

以下で一つずつご紹介します。

根管治療とインプラント、それぞれの痛みについて

根管治療もインプラント治療も、治療中にはきちんと局所麻酔を行うことで、治療途中に痛みを感じることはありません。

治療後の痛みについては、根管治療の場合は歯の根の先端を触ることがあるため僅かな鈍痛を感じることもあるようですが、そこまで強い痛みが出ることは稀です。

しかし、インプラント治療においては外科処置が伴うため、どうしても痛みはでてしまう事が多いです。そのため、術後2日〜3日間は痛み止めを内服していただくことが多いです。

つまり治療中の痛みは根管治療もインプラント治療も感じることはないですが、治療後の痛みはインプラント治療の方が出る可能性が高くなります。

根管治療とインプラント、それぞれの治療期間について

根管治療の治療期間は、その歯の状態や歯種(前歯か奥歯か)によっても異なりますが、週に一度通院するとして1ヶ月前後(3回〜4回の治療)が多いと思います。

インプラント治療は、骨や周りの歯茎の状態によりますが、とても状態がよければ一度の手術で3ヶ月くらいで歯が入る場合もあります。

インプラントの場合は患者様ご自身の骨とインプラントが結合するための時間が必要になるので、どうしても待機期間が必要になるので、全体的な治療期間は長くなる傾向にあります。

根管治療とインプラント、それぞれの費用について

根管治療は日本の国民保険の制度においては健康保険でも受ける事ができます。

そのため、健康保険を用いて根管治療を受けると前歯で2,000円前後、奥歯でも3,000円ほどで治療を受ける事ができます。

しかし、根管治療自体は決して簡単な治療ではないため、上記で述べたようにラバーダム防湿をせず簡易的な治療では治癒しないこともあります。

この根管治療を専門として治療している専門医の先生方は、少しでも根管治療の成功率を上げるためにラバーダム防湿を必ず行い、様々な薬剤を使って治療をされる先生もいらっしゃいます。

そういった先生方は根管治療を自費診療で行い、しっかりと時間を確保し、より安全で確実な治療をされています。

費用はその先生ごとで違いはありますが、5万円〜20万円ほどの先生が多いように感じます。

インプラント治療も自費診療になるため決まった治療費用がございませんが、インプラント1本が30万円〜45万円の医院が多いようです。

そのインプラント治療に骨を作る治療や、静脈内鎮静など追加で必要な治療が追加されることになります。

インプラントが必要な本数などに応じて治療費用も大きく変わるので、担当の先生と術前によく相談されることをお勧めいたします。

当院ではインプラント治療の無料相談も行っておりますので、ぜひご利用ください。

根管治療とインプラント、どちらを選べば良い?

この問いに対する答えは非常に難しく、患者様ご自身の価値観に左右されるところが大きくなります。

例えば、アメリカのように国民保険のない国であれば、根管治療もインプラント治療も費用に差がないため、長く保存できないような状態の悪い歯においては、インプラント治療を選択される患者様が多かったです。

合理主義のアメリカ人らしい発想だと思います。

逆にご自身の歯を残すことを一番に考える日本人の方は根管治療を選択される方が多いように感じます。特に日本では感染を起こしているような歯であっても無理に残す傾向があるため、抜歯に抵抗を感じる患者様もいらっしゃいます。

しかし、感染が残っている歯の周りの組織は、その後徐々に骨が溶けてしまいどんどん悪化していきます。

つまり、ギリギリまで状態の悪い歯を残してしまうと、次にインプラント治療をしようとした時に骨が残っていないといったケースも珍しくありません。

ですので、その歯を「残す価値があるのか?」「きちんと治癒させる事ができるのか?」を適切に検査を行い判断した上で、患者様にもご納得していただいた上で治療方針を決める事がとても大切になります。

ご自身の歯を残したいなら根管治療

レントゲンなどの各種検査をした上で、きちんと歯を残して咬合させる事ができるようであれば、一度根管治療を受けていただくのが良いと思います。

その治療の最中に歯のヒビなどが発見されることもあるので、一度治療を受けていただいた上で残して行けそうであれば根管治療を進めれば良いと思います。

少しでも治癒する確率を上げるためには健康保険内の治療ではなく、根管治療の専門医の治療を受けて整った環境で根管治療を受けることをお勧めします。

歯を残すのが難しいケースならインプラントがおすすめ

頑張って根管治療をしても完全な治癒は難しい、もしくは歯にヒビが入っているなどが確認された場合には、インプラント治療に進んだ方が良いかもしれません。

感染が残っている状態で被せ物を入れたとしても、勝手に感染がなくなることもないですし、噛むと痛みが出てくることもあります。

治癒しない状態で使い続けることで周りの状況が悪化することもあるので、ある程度のタイミングでの判断が必要になります。

歯を永く残すことは難しくても、根管治療で延命をする意義

歯も長期間使っていれば消耗していきますし、インプラントも一生保つ保証はできません。

つまり、歯をある程度良い状態で使えるところまで使って、しかるべきタイミングでインプラント治療に切り替えることができれば、一番安心していただけると思います。

当院では、折れてしまった歯を部分矯正で引き上げて、きちんと根管治療をした上でもうしばらくご自身の歯を使っていただく努力をしています。

特にこのような治療は若い患者様に有効で、インプラント治療の寿命が20年だと仮定した場合に、できればインプラント治療は50代〜60代くらいで受けていただけると、その方がなくなるまで安心してインプラントを使っていただけると考えています。

そのため、無闇に歯を残すのではなく、感染のない良い状態でできる限りご自身の歯を使っていただき、本当にその歯が抜歯をしなければならないタイミングで患者様とご相談しインプラント治療に切り替えていくことで、安心してインプラントを使っていただけるような治療が最善だと考えています。

まとめ:適した治療がわからなければ、当院のカウンセリングにお越しください

このページでは『根管治療とインプラントのどちらを選ぶべきかわからない』という悩みをお持ちの方に向けて、それぞれの治療のメリットやデメリットなどを解説いたしました。

どちらの治療を選ぶべきかという疑問への答えは非常に難しく、患者様それぞれの価値観に左右されるところも大きいです。また実際に患者様のお口を見させていただき検査を行って、初めてわかることも多いため、このページだけを見て自己判断されることはお勧めできません。

ご自身の歯が根管治療で残すべき状態か、抜歯して次のインプラントなどの治療に進むべき状態なのかわからない。かかりつけの歯科医には抜歯しかないと言われた。といった方は、ぜひ一度当院のカウンセリングにお越しください。

当院では患者様一人ひとりにしっかりと時間を設けて、精密な検査と丁寧なカウンセリングを行っております。

監修者情報

福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。

診療時間
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(※土曜にセミナーがある週は木曜に振替診療します)

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