24/12/07
インプラントかブリッジか迷ったら?費用やメリット・デメリットを徹底比較
インプラント治療の成功の鍵はインプラント体(ネジ)がきちんと骨の中に埋め込まれていて、骨の中でインプラント体が安定していることにあります。
しかし、上顎の奥歯は上顎洞と呼ばれれる空間と隣り合わせのため、歯がなくなってしまうとインプラント治療をするために必要な骨の幅や厚みが不足することがよくあります。
この「上顎洞」と呼ばれる空洞は副鼻腔の中の一つの空洞で、蓄膿症の時に膿が溜まる場所になります。上顎洞の空間は基本的にばい菌の存在しない空間なのですが、薄い骨にインプラントを無理に埋め込んで上顎洞の中にインプラントが突き出てしまうと、このことが原因で上顎洞の中にばい菌が侵入してしまい、上顎洞炎(蓄膿症)になってしまうことがあります。
このようなことを防ぐためにサイナスリフトやソケットリフトと呼ばれる特殊な術式を応用することで、インプラントが上顎洞の中に突き出ないように、また薄くなった骨の周りに新たに骨を作り、厚みのある骨の中でインプラントが安定できるような環境を作ることができます。
この術式を使うことで骨が薄くなってしまった方でもインプラント治療ができるようになるので、もしも今までに骨が足りないからとインプラント治療を断られた経験のある方はぜひご一読ください。
それぞれの術式の共通点は、「上顎洞粘膜」と呼ばれる骨に引っ付いている薄い膜を丁寧に剥がして持ち上げ、そのスペースに新しい骨を作るための術式であるということです。
サイナスリフトとは
ソケットリフトとは
それぞれの術式について細かくご説明していきます。
ここからはサイナスリフトの治療の流れや実際の症例写真、またメリットやデメリットについてご説明いたします。
この術式は1980年にアメリカの Boyne先生が開発された術式で、それ以降現在にいたるまで世界中で行われている治療なのでとても信頼性のある治療方法です。この術式の特徴は、骨がかなり薄くても新たにたくさんの骨を作ることができるので、とても確実な治療法になります。また先ほどご説明した「上顎洞粘膜」は人によって厚みが様々で、薄い方は和紙程度の厚みしかないため、術中に破れてしまうこともありますが、この術式であれば破れていることに気付くことができるので確実に対処できる治療法になります。
サイナスリフトはある程度の厚み(5mmくらい)の骨があれば、同時にインプラントを埋め込むこともできますし、骨が薄すぎるようであれば骨だけを作ることもできる術式になります。今回は骨を作るだけの術式について解説していきます。
上顎洞の中はばい菌の居ない環境なので、外部からばい菌を持ち込まないためにも清潔な状態で治療を進めていくことが非常に大切になります。やや広い範囲にしっかりと局所麻酔を行い、手術中に痛みが出ないように準備をしていきます。手術が怖くて勇気が出ない方は寝た状態(静脈内鎮静)で手術を受けることも可能です。そして、歯茎を切開し、剥離して、上顎洞へアプローチをする準備をしていきます。
手術までにCT画像をよく見て、窓を開ける位置を決定していきます。三次元的な位置関係が難しい場合には3Dプリンターなどを使って顎の骨を実際に作成して窓を開ける位置を考えます。
実際にイメージした部分の骨を削っていき、窓を開けていきます。この時に上顎洞粘膜を巻き込んで破ってしまわないような慎重な手技が必要です。骨の厚みが不均一であったり、血管が近くを通っていたりもするので手術前にどれだけCTを見て診断しているかがポイントです。
慎重に上顎洞粘膜を剥がしていきます。とても狭くて暗い空間なので慎重な手技が必要です。ある程度広い範囲の剥離をしなければ多少の後戻りをしてしまうので、要注意になります。
患者様に深呼吸をしていただき、上顎洞粘膜が破れていないかを確認します(Valsalva法と呼びます)。この時に破れてしまっている箇所があれば塞ぐ処置をします。
上顎洞粘膜を持ち上げて、粘膜が破れていないことが確認できれば人工の骨を入れていきます。人工の骨は顆粒状ですので、奥から丁寧に詰めていきます。
人工の骨を詰めることができれば歯茎を元の位置に縫合していきます。縫合が終われば出血がないことを確認して、最後にCTを撮影して最終確認をします。CTで問題がなければ痛み止めと抗菌薬を処方して終了です。
元々の骨の状態などによって個人差はありますが、4〜6ヶ月ほど待って再度CT画像などで確認を行い、問題がなければインプラントを埋め込む計画を立てていきます。この4〜6ヶ月の間で人工の骨と患者様のご自身の骨が馴染むのを待ちます。
それでは実際に私が患者様に行ったサイナスリフトの症例を見ていきましょう。
この患者様はすでにインプラント治療を終えて、美味しくお食事を取れるようになりました。
骨がかなり薄くても、一度でたくさんの骨を新たに作ることができる
万が一、上顎洞粘膜が破れてしまっても目視で見つけることができる
手術範囲がソケットリフトと比較して広くなるため、手術後の痛みと腫れが出やすい
外科的な経験や解剖の知識が特に必要とされる
ソケットリフトはサイナスリフトが開発された後に1994年にアメリカのサマーズ先生たちが報告された術式になります。基本的にはインプラントを同時に埋め込む術式になるので、ある程度骨の幅と厚みがあるときに用いる術式になります。
この術式の特徴は、サイナスリフトと異なり、インプラントを埋め込む小さな穴からしかアプローチができないため、上顎洞粘膜を目で見て確認できないので手指の感覚が非常に要求されるとても繊細な術式です。また上顎洞粘膜が破れていないかの確認も難しく、経験が必要です。
この術式はインプラントの埋め込みも同時に行う術式なので、サイナスリフト同様に清潔な状態で処置を行います。しっかりと局所麻酔を行い、手術中に痛みが出ないように準備をしていきます。そして、歯茎を切開・剥離して、インプラントを埋め込むための穴を掘る準備をします。サイナスリフトと比較して、歯茎を剥離する範囲は狭くなることが多いです。
手術前に計画した通りの位置に穴を開けていきます。その時に間違えて上顎洞の中にドリルが突き抜けないように深さをきちんと確認しておきます。
慎重に上顎洞粘膜を持ち上げていきます。サイナスリフトと異なり、直接粘膜を目視できないため、ほぼ手指感覚のみになります。この時に上顎洞粘膜を破かずに持ち上げるために様々な器具が開発されています。
上顎洞粘膜が破れていないかを確認しますが、アプローチしている穴が小さい(インプラントの直径:5mm程度)のため確実な確認法はありません。Valsalva法も行いますが、信頼性は高くありません。
次に人工の骨を入れていきます。人工の骨は顆粒状ですので、奥から丁寧に詰めていきます。
人工の骨が入ったらインプラントを予定していた位置に入れていきます。
インプラントがきちんと固定できれば、歯茎を元の位置に縫合していきます。縫合が終われば出血がないことを確認して、最後にCTを撮影して最終確認をします。CTで問題がなければ痛み止めと抗菌薬を処方して終了です。
それでは実際に私が患者様に行ったソケットリフトの症例を見ていきましょう。
この患者様はすでにインプラント治療を終えて、美味しくお食事を取れるようになりました。
手術の範囲が狭いため、患者様の負担が少なくできる
同時にインプラントの埋入ができるので治療期間が短くできる
上顎洞粘膜が破れていないかの確実な確認ができないので、危険性がある
かなり繊細な手技が必要なので、経験が求められる
簡単そうに見えて、本当はかなり難しい術式なので、上顎洞粘膜が破れた時の対応ができないと危険
治療費用は20万円〜40万円が相場のようです。ソケットリフトと比較してたくさんの骨を作ることができます。
当院では25万円(税抜)で行っております。
治療期間は半年から1年になります。
治療費用が3万円〜15万円が相場のようです。サイナスリフトと比較して作ることができる骨の量は限定的です。
当院では10万円(税抜)で行っております。
治療期間は4ヶ月から半年になります。
サイナスリフトやソケットリフトは1980年代から行われている非常に成功率の高い治療方法になりますが、どちらの術式も非常に高い技術力と経験が必要になる術式になります。また、特にソケットリフトは患者様への侵襲も少なく、一見簡単そうに見える術式のため若手の先生でも積極的に行っていますが、この術式は非常に繊細な術式なため要注意になります。
2021年に日本口腔インプラント学会から報告されたこの論文によると、2012〜14年報告されているインプラント治療の併発症の内訳で、注目すべきは併発症の上位3つのうち2つは上顎洞に関するトラブルになっているという点です。
つまり、しっかりと経験を積んだ歯科医師がこれらの手術を行わないと、万が一術後の併発症を起こした場合に対応が遅くなってしまうことがあります。
実際に今までに私が遭遇した症例を少しご紹介致します。
ソケットリフトを計画するも手術中に上顎洞粘膜を破ってしまし、インプラントが上顎洞内に落ち込んでしまった症例
ソケットリフトを行うも、手術後に上顎洞にばい菌が感染していまい、蓄膿症になってしまった症例
サイナスリフトの手術中に上顎洞の粘膜が破れてしまった症例
当院の院長は口腔外科の経験が多く、また日常的にサイナスリフトやソケットリフトを行っているため、万が一の併発症が起こった場合も当院で対応可能です。
手術前のCT画像を診断して適切な治療プランと検討することはもちろんですが、その患者様の体調や手術時間など全てを考慮した上で最適な治療プランを提案しております。できる限り侵襲の少ないソケットリフトを選択しますが、それでは長期的な結果が思わしくない場合にはサイナスリフトを行います。また、万が一ソケットリフトで上顎洞粘膜が破れてしまった場合でも、全て対応することができます。
私が行った患者様の治療はこちら→
他院でソケットリフトやサイナスリフトを施術し、残念ながら併発症などが起こってしまった場合には当院で患者様の受け入れをして、当院にて適切な治療を行います。また、ご依頼があれば当院での手術や他院への出張手術を行い、確実な治療を提供しております。
実際の症例はこちら→
若手の先生方が無茶な治療に臨まないように、SNSを通じて先生方の治療計画を無料相談しております。その先生方の治療レベルを把握した上で検討している治療プランが可能な範囲内なのか、ソケットリフトやサイナスリフトが可能な症例なのかをご相談に乗っております。その先生には難しい治療の場合は出張手術をするなどしてサポートしております。
実際のセミナーの様子はこちら→
サイナスリフトやソケットリフトは昔から行われている確実性の高い治療方法ですので、安心して施術を受けていただければと思います。適切な術式を選択して、インプラント体がしっかりと骨の中で安定している事が、インプラントが長持ちする秘訣になります。
しかし、まだ若手の先生や外科手術の経験が浅い先生が、無茶な治療に臨んでしまうケースや、術後の併発症への対応が遅くなってしまうケースなどもございます。
当院の院長は口腔外科やインプラント外科の経験が多く、日常的に自院や出張手術にてサイナスリフトやソケットリフトを行っているため、万が一の併発症が起こった場合も対応可能ですので、安心して治療を受けていただければと思います。
1人でも多くの患者様が、インプラント治療でお食事を美味しく召し上がっていただけるようになれば嬉しいです。
当院ではインプラント治療の無料相談も行っておりますので、遠慮なくお問い合わせください。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
ご予約・お問い合わせ0742-93-8363
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