「インプラント難民」にならないために、患者様に確認しておいてほしいこと。 - 奈良でインプラント専門口腔外科医による治療なら「LOHASデンタルクリニック」

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news/ コラム「インプラント難民」にならないために、患者様に確認しておいてほしいこと。

コラム

「インプラント難民」にならないために、患者様に確認しておいてほしいこと。

インプラントのメーカーの数、ご存じですか?

今では一般的に皆様から認知されている「インプラント」ですが、世界中には約100種類以上あり、日本国内で認可を受けているインプラントだけでも30種類以上があると言われています。

そのため歯科医院によって取り扱っているインプラントの種類が異なり、転院を検討していても患者様に埋入されているメーカーのインプラントに転院先の歯科医院が精通していないということが多々あります。

インプラント治療を受けられた患者様がずっと同じクリニックでメインテナンスや治療を受けられれば良いのですが、実際にはさまざまな理由で同じ歯科医院で治療を受け続けられないこともあります。

  • 転勤や引っ越し
  • インプラント治療を受けたクリニックの閉院
  • クリニックとの関係が悪くなり通いたくない
  • 患者様の高齢化により通院が難しくなった

さまざまな理由で、患者様がインプラントの治療を受けたクリニックに通院ができなくなることがあります。このような状態を、「インプラント難民」というように表現しています。

別の歯科医院でのメインテナンスは難しい?

それではかかりつけ歯科へ通院できなくなった患者様はどうすれば良いのでしょうか。

問題なく機能している間は特にお困りになることはないのですが、インプラントも所詮は「人工物」です。長く使っていると被せ物が破損したり、インプラント周囲が歯周病の様な状態になるなど様々なトラブルを避けることはできません。

つまり、一旦インプラント治療を受けると、次はインプラントを長持ちさせるために、必ず定期的なメインテナンスが必要となるのです。ですので元々通っていた歯科医院に通えなくなった患者様は、新たにメインテナンスをしてもらえる歯科医院を見つけなければなりません。

しかし実際には、以下のようなことが多いです。

  • うちはインプラントに特化した歯科医院ではないので、メインテナンス方法が分からない
  • メインテナンスして痛みが出たなどトラブルになると困るので、できれば触りたくない
  • インプラントのメインテナンスは健康保険ではできないので受けづらい
  • インプラントの周りが炎症を起こしているが、トラブルになると困るので患者様に言いづらい

歯科医師の立場からお話しすると、このような理由で積極的に治療ができないケースも理解できます。しかし患者様にとっては、たらい回しにされたと感じるでしょうし、実際にメンテナンスが受けられないことでお困りになる患者様もいらっしゃる様です。

インプラント難民の患者様が来られた際に当院で行う治療内容

当院ではインプラントのお困りごとで受診される患者様が多いので、できる限り積極的に治療をさせていただく様にしています。

(実際の治療内容はこちらのブログに記載しています↓)

今回ご来院くださったインプラント難民の患者様は、インプラント治療を受けた歯科医院が閉院してしまい、インプラントの修理を行ってくれる歯科医院が見つからないということでお困りでした。

この患者様は被せ物の破損だけで、インプラントはまだ使えそうでした。

まずはお口の中のチェックをさせていただき、インプラントに不具合が出ていないかを確認していきます。

①インプラントの情報の確認

そして次に行うことは、どこのメーカーのインプラントが埋入されていかを確認することは大切です。

被せ物のトラブルやインプラント周囲が炎症を起こしている場合、メーカーが分からないと治療ができないからです。

そこで一番確実なのは、患者様がご自身で自分に埋入されているインプラントの情報をお持ちになっているということです。今までにこの様なトラブルが頻発したことから、現在では日本インプラント学会でもインプラントカードを発行するように強く薦められています。

しかし、残念ながらこのカードがどこまで広まっているかは私にも分かりませんし、患者様がこのカードを無くさずに持っていてくださるかも少し不安が残ります。

②インプラントのレントゲンを撮影し形状の確認

インプラントの形は千差万別なため、それぞれの形態に特徴があります。その特徴を確認するだけでインプラントメーカーが特定されることがあります。特に日本や世界でのシェアが多いインプラントになるとよく見かけるレントゲンの写り方をするので特定が容易な場合が多いです。

What implant is that?」より抜粋

こちらは実際に当院で撮影した時のレントゲン画像になります。

インプラントにも様々な形状があります。

お口の中を確認するだけではメーカーの特定が難しいので、小さなレントゲンを撮影し、インプラントの形状を確認していきます。

③インプラントメーカーを特定するために、データベースや書籍、コミュニティーへ照会

次に自分自身でレントゲン写真から確認ができるデータベースがあるので、そこに問い合わせてレントゲン写真からどのメーカーのインプラントが入っているかを特定していきます。

今回の患者様の場合はデータベースだけでは特定が困難だったので、歯科医療関係者のオンラインコミュニティーで相談を行い、インプラントメーカーの特定に至りました。

ただ、ここから実際の治療をしていこうと思うと、この特定されたインプラントがどのような太さのものが入っているかを特定する必要があります。なぜならインプラントメーカーによってはインプラント体の太さによって治療に必要なパーツが異なるため、治療を進めることができません。

レントゲン上でも長さを計測することもできますが、撮影される角度によって少し歪んで撮影されることもあるので不確実になります。

④インプラント体のサイズの確認

BioHorizon社から引用

インプラント体のサイズを確実に把握するためにはインプラントの内面やパーツの色を確認する方法を用います。

それぞれのインプラント会社はそれぞれにカラーコードと呼ばれる色分けをしており、例えば細いインプラントはシルバー、太いインプラントは緑など内面やパーツを色分けすることで太さを確認できるようにしております。

今回の患者様ではインプラントのパーツでカラーコードを判断することができたため、インプラントのサイズを特定することができました。

今回は黄色だったので太さは3.8mmであることが判別できました。

ただ、今回の患者様の被せ物はネジ止めではなくセメントで固定されていたため、インプラントの内面やパーツの色を確認するためには、この壊れた被せ物を一度壊さないと確認ができません。ネジ止めであれば壊さなくても確認できることが多いです。

⑤このサイズのインプラントに必要なパーツのオーダー

この患者様に入っていたインプラントは当院で取り扱いのあるメーカーではなかったため、ここから新しく被せ物を作成するために必要なパーツ(型取り用のパーツなど)を手配していきます。日本に取り扱いのあるパーツであれば約1週間ほどで取り寄せることができます。

⑥パーツを使って新しい被せ物の準備と装着

パーツが届けば、あとは型取りをして新しい被せ物を技工所で作成し、装着していきます。

この患者様は初診で来られてから新しい被せ物が入るまでに3ヶ月ほど掛かりました。その間は仮歯などを使って不便がないように努めています。

このように患者様に埋入されているインプラントのメーカーとサイズが分からないと、一から情報収集をしなければならないため、時間が掛かります。

複数の医院でインプラント治療を受けられている患者様であればもっとたくさんの時間が掛かります。

この様な手順が面倒だと感じて、お困りの患者様がいらしても断る歯科医院があることも現実です。

患者様が「インプラント難民にならないために…」

今回の患者様でも初めからきちんとした情報が手元にお持ちであれば、こんなにも大変なことにならなかったのではと振り返って感じます。

しかし、クリニックがすでに閉院していて連絡が取れないことや関係が悪化しているために連絡を取りたくないなどのことが現実問題として起こっております。

しかし、実際の医療現場においては、インプラントに特化していない先生方にとって他院で治療を受けたインプラントの治療をすることはとてもストレスであり、時間と手間がかかることは間違いありません。

できることであれば、お断りするか専門の施設に紹介ができればと考えることでしょう。

当院ではこのようにインプラント治療を受けて後悔をする患者様を1人でも減らしたいと思っておりますし、そういった患者様の砦になれればと思っております。

インプラントはきちんと計画を立てて治療をすれば、本当に素晴らしい治療法であることは疑いのないことです。

お困りの患者様や、お困りの先生方いらっしゃれば遠慮なくご相談をしていただけますと幸いです。

監修者情報

福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。

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