25/01/27
オールオン4は歯茎なしでもできる?人工歯肉の必要性やメリットを解説
『今は総入れ歯をしていますが、オールオン4の治療はできますか?』
『痩せた歯茎のままで治療をして、その後の見た目が変にならないか不安です…』
『オールオン4は歯だけが付くのですか?』
多数の歯を失った方の治療の選択肢として、近年注目を集めているオールオン4。入れ歯が動いてしまって歯茎が痛い、硬い食べ物が噛めない、といった方からも人気の治療法です。
しかし総入れ歯を長く使われている患者様は歯茎が痩せていることが多いため、痩せた歯茎の上にオールオン4で治療を行なっても、見た目に違和感が生じるのではないかと心配される患者様も多いです。
そこでこのページでは、歯茎なしでもオールオン4で治療できるのか、インプラントやオールオン4の治療を専門的に行う奈良県のLOHASデンタルクリニック院長の福居が詳しく解説します。
目次
オールオン4は、顎の骨に最小4本のインプラントを埋入し、12本分の人工歯を固定する治療法です。
歯の大部分を失った患者様への治療として、近年注目されていますが、歯の大部分を失うと歯茎が痩せてしまうことが多いです。
そんな患者様から『歯茎が痩せてしまってもオールオン4はできるのでしょうか?』とご質問をいただくことは少なくありません。
結論としては、歯茎が痩せていてもオールオン4での治療は可能です。歯茎が痩せたままオールオン4の治療を行ったら、見た目が変になってしまうのでは?と思われるかもしれませんが、オールオン4なら歯茎が痩せていても審美性を担保することが可能です。
なぜ審美性を確保できるのか?という疑問にお答えするために、まずはオールオン4の構造について、簡単にご説明します。
オールオン4は、大きく分けると3つの主要なパーツで構成されています。
インプラント体は、顎の骨に埋入して、上部構造を支えます。アバットメントなどのフレーム構造は、インプラント体と上部構造を繋ぐ接続部品としての役割を持っています。
そして上部構造ですが、この上部構造がいわゆる『歯の部分』を指しています。
一言でオールオン4といっても、上部構造の構造には様々なパターンがあります。
大きく分けると
がいらっしゃいます(下図参照)
歯茎が痩せている患者様の場合、人工歯肉がついた入れ歯タイプのオールオン4を選択することで、人工歯肉によって歯茎の審美生を担保できます。
患者様のご希望としては”歯だけ”をご希望される方が多いように感じますが、残念ながら口腔内の状態によっては入れ歯タイプが必要な方も多くいらっしゃいます。
特に総入れ歯からの治療となると入れ歯タイプが多くなります。
歯を全て失ってしまった方の大半はその周囲の骨や歯茎も同時に失ってしまっています。
つまり、オールオン4の治療で歯だけをつけてしまうと、失われた組織のボリュームを補い切れず、口元がとても貧相になってしまいます。
特に上唇部のボリュームが不足していると、口元のシワ(ほうれい線など)が目立ってしまい、老けて見えてしまいますので、術前の診断がとても重要と言えます。
オールオン4治療が開発された元々のコンセプトとしては、基本的には骨造成を行わなくても比較的骨のある部分を利用しながら治療を進めるので、ある程度の骨が残っていれば治療ができる可能性はあります。
しかし、骨があるところにとりあえずインプラントを入れるという考え方だと、例えば口蓋側(歯列の内側)にインプラントが入りすぎて、舌の可動域が制限されて発音しにくくなることなどが起こります。
これを防ぐためには、骨造成などで骨を増やしてインプラントを埋入することで、舌のスペースを広く取ることができ、違和感が少なく発音などにも影響のない計画を立てる必要もあります。
このように、患者様の年齢や体調などによっては違うオプションを検討することも必要になります。
骨がほどんどない患者様、もしくは患者様の年齢も若くてインプラントをより長持ちさせる必要がある場合においては、様々な骨造成を行った上でインプラント治療を行う必要があります。
逆に、高齢の患者様で複雑な手術を行うことが、体力的に難しい場合には骨造成をできるだけ避ける場合もあります。
オールオン4治療に至るまでの経緯によりますが、すでに骨や歯茎が萎縮してしまっている患者様が多いので歯茎付きの上部構造物になる方が多いように感じます。
患者様のご希望もあると思いますが、歯茎付きが決して悪い選択肢ではありません。
大切なことは、患者様それぞれに適した選択肢を選ぶことにあります。
オールオン4治療を行う上で人工歯肉を付けるかどうかに関しては、患者様に選んでいただくというよりは、患者様に必要な上部構造物をご相談の上装着するという形になると思います。
しかし、患者様の目線では治療開始前にどちらが装着されるかはある程度把握されておく必要があると思います。
骨と歯茎の退縮が進行している患者様は、人工歯肉を付けなければ人工歯の根本まで見えてしまい、歯が長いような見た目になってしまいます。
それに対して人工歯肉がついているオールオン4は、非常に綺麗な見た目の入れ歯をインプラントで固定するようなイメージの見た目になるため、高い審美性を担保できます。
人工歯肉の部分は、唇をめくりあげたりしなければ、見た目にほとんど違和感はないはずです。
人工歯肉があることで、将来的にさらに歯肉の退縮が進んでしまっても、違和感のあるような見た目になることはありません。
患者様が笑われた時にどの程度歯や歯茎が見えるかによって考え方は変わります。
唇の上がり具合(スマイルライン)によっても異なり、笑った時に歯茎が見えやすい所謂ガミースマイルの方の場合は、笑った時にインプラントと上部構造物の境目が見えてしまうことがあります。
その場合は人工歯肉を付けることで、違和感のない笑顔で笑っていただけるようになります。
全ての歯を失って歯肉も退縮している方が治療を行う際に、歯茎部分の審美性を求める場合は総入れ歯か人工歯肉ありのオールオン4をご選択されるかと思います。
総入れ歯の歯肉の部分には、総入れ歯を固定する役割があるため分厚い構造になっており、入れ歯と一緒にガタガタ動いてしまったり、喋る際に強い違和感が生じて発音・発声に影響してしまうことがあります。
対して人工歯肉ありのオールオン4は、総入れ歯と同じように歯茎部分の審美性を確保でき、入れ歯の人工歯肉よりも薄く作ることができる点、固定されているため動いたり違和感につながることが少ない点から、発音・発声への影響は比較的少ないと言われています。
人工歯肉ありのオールオン4の場合、ピンク色の歯肉を付ける分、上部構造物を作製する技工料が高くなる兼ね合いから、治療費用も少し高く設定されているクリニックが多いと思います。
人工歯肉なしであれば、その分の技工料が安くなることがあります。オールオン4の治療費用全体との比率で見れば、あまり大きな金額が増減するわけではありませんが、人工歯肉無しで治療を行えば少しでも費用を抑えることが可能です。
歯肉が退縮している患者様の場合、インプラントの人工歯根(土台の部分)と、人工歯の境目が露出してしまうことがあります。この境目の部分に食べ物のカスなどが詰まってしまうと、衛生面の問題が生じます。具体的にはインプラント周囲炎とよばれる歯周病によく似た症状が現れることがあり、進行するとインプラントの脱落にもつながります。
オールオン4に人工歯肉があることで、境目の部分が露出しないため、食べカスが詰まるような形で衛生面の問題が生じる可能性を軽減できると言われています。
人工歯肉があるタイプのオールオン4では、歯磨きが少し難しくなってしまうことがあります。通常の歯磨きでは歯茎そのものをブラッシングすることはあまり無いと思いますが、人工歯肉はブラッシングしなければ汚れがついてしまうため、通常の歯磨きよりも広い範囲を磨くことになります。
オールオン4の人工歯肉は、歯茎と骨が下がった部分をカバーするような形で位置します。ご自身の歯茎と人工歯肉の間に境目ができるため、その部分が上手く磨けないと、境目に食べかすなどが溜まりやすくなってしまいます。特に上顎の場合、本来歯磨きをする部分よりも口の中のかなり上の方を磨くイメージになるので、磨きにくく汚れを綺麗に落とすのが難しいです。
適切にケアができず汚れが溜まったままになると、インプラント周囲炎などの原因になる可能性があるため、丁寧なセルフケアと定期的な通院でのクリーニングが重要になります。
人工歯肉は歯科用の材料を使用して作成されていますが、経年劣化してしまうケースもございます。人工歯肉に経年劣化による変色や破損が生じた場合には、作り直しのために追加で費用がかかってしまいます。
人工歯肉の材料としては、一例ではありますが以下が挙げられます。
レジンやハイブリッドセラミックは、比較的安価な素材で患者様の金銭的な負担を抑えやすいです。ただし、経年劣化しやすい特徴があり、変色や破損による作り直しのリスクがあります。また表面についた汚れが落ちにくく歯垢が付きやすいため、衛生面にも優れているとは言えません。
対してセラミックやジルコニアは比較すると経年劣化しにくく、表面もツルツルとしているため、汚れや歯垢も付着しにくく衛生的です。ただしこれらの素材は、レジンやハイブリッドセラミックよりも高価な素材のため、費用負担は少し大きくなります。
経年劣化による作り直しのリスクから、セラミックやジルコニアを選んだ方が長期的に費用がかからないと言われており、衛生面のメリットが大きい点からも当院ではセラミックやジルコニアをおすすめしております。
人工歯肉が必要かどうかですが、基本的には患者様がご判断するというよりは、歯科医師が判断してその上で患者様とご相談を重ねていくようなことが一般的です。
では歯科医師はどのような基準で、人工歯肉が必要かどうか判断するのでしょうか。
最終的には総合的な判断が必要ですが、大きな基準としては以下のようなものが挙げられます。
歯周病が進行した状態で歯を残しておくと、周りの骨は破壊されていくので、歯を抜いた時には骨がほとんどなくなってしまっていることがよくあります。
また、抜歯をしてから時間が経ってしまうと、時間経過とともに周りの歯茎や骨は吸収されてしまうため、時間が経ち過ぎてしまうと人工歯肉付きの上部構造物が必要となる可能性が高くなります。
逆に、抜歯の前からオールオン4治療をすることが決まっていれば、周りの組織を最大限保存できるため、歯だけを装着することができる可能性があります。
前述したように、失われた組織のボリュームが大きいと歯だけの上部構造物では補い切れず、口元がとても貧相になってしまいます。
普段入れ歯を装着している方が、入れ歯を外した時に一気に口元が老け込んでしまうことを思い出していただけると、想像できると思います。
特に上唇部のボリュームが不足し、噛み合わせの高さが下がってしまうと、口元のシワ(ほうれい線など)が目立ってしまい、老けて見えてしまいます。
このように審美性を向上させるためにも、人工歯肉が必要となる場合も多いです。
患者様によって笑った時の唇の上がり具合はそれぞれなので、術前からよく診断する必要があります。
上唇がよく上がる方であれば、笑った時に見えやすいのでインプラントと上部構造物の連結部は見えないような工夫が必要になります。
よく唇が上がる方に、ご自身の元々の歯よりも長い歯を入れてしまうと、笑った時に不自然に見えてしまいます。
この辺りのことは手術前の診断で判断できる内容になるので術前の診断がしっかりとしているクリニックでの治療をお勧めいたします。
このページでは歯茎や骨が減っていてもオールオン4での治療ができるのか、オールオン4の上部構造に人工歯肉があるものとないもので、どのような違いがあるか、どのような基準で人工歯肉の有無を選ぶのか、といった内容についてご説明いたしました。
オールオン4は元々のコンセプトとして、骨が吸収している方でも、骨造成(骨を作る治療)を行わずに歯を入れられるように作られています。
そのため骨が減っていても治療可能なことが多いです。ただし骨が大きく失われている方や、まだお若くてより長期間オールオン4を保たせる必要がある場合には、骨造成を行った方が良いケースもございます。
また骨の吸収に伴って歯茎が薄くなっている患者様も多いですが、その場合でもオールオン4の治療は可能です。歯茎が退縮している場合でも、オールオン4は上部構造に『人工歯肉』をつけることができるため、歯茎の審美性を補うことができます。
人工歯肉の有無については、基本的には歯科医師の検査や診察、カウンセリングによって判断します。患者様は人工歯肉無しの”歯だけ”のものをご希望される方が多いように思いますが、人工歯肉の有無はしっかりとした根拠のもとに歯科医師が判断しておりますので、安心してお任せいただければと思います。
オールオン4治療をご検討の方は、まずは無料カウンセリングにてご相談ください。インプラント治療の専門家で経験豊富な院長が、患者様の状態や希望を詳しくお伺いした上で、最適な治療プランをご提案させていただきます。
福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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