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コラム

入れ歯が合わずにお困りの患者様へ

ご飯を食べるときに痛くなって思わず外してしまう入れ歯

本来であれば食事を楽しむための道具である「入れ歯」ですが、よく患者様から聞くお話は食事の時は外してご飯を召し上がっておられて、外出するときに見た目のために装着していると伺います。

なぜ、入れ歯はなかなか安定せず歯茎に痛みが出てしまうのでしょうか。また、どうすれば入れ歯を快適に使うことができるのでしょうか。

入れ歯(義歯)とは

入れ歯の種類

・健康保険の入れ歯

健康保険内で作成できる部分的な入れ歯で、支えになる歯があればその部分にはクラスプと呼ばれる引っ掛ける金具が付きます。その患者様のお口の中の状況によって入れ歯の設計は様々になります。

総入れ歯の場合は全てがプラスチックでできた入れ歯になるので、少し厚みのある入れ歯にあります。

・自費の入れ歯

自費の入れ歯には様々な入れ歯があり、昔から使われている金属床を用いた入れ歯から最近よく使われているノンクラスプ入れ歯というものがあります。

金属床を用いた入れ歯は健康保険の入れ歯に比べると床の部分を薄くできるので、お口の中での違和感を軽減することができます。

また、ノンクラスプ入れ歯は歯にかかる金具がプラスチック製になるので、口元から金具が見えにくい入れ歯となっています。

その他にもご自身の歯に磁石を埋め込むマグネット義歯や入れ歯自体をご自身の歯に嵌め込むようなコーヌス・テレスコープ義歯など多種多様の形があります。

コーヌス・テレスコープ義歯

入れ歯の問題点

歯にかかる負担

入れ歯をつけると痛みが出る原因は、入れ歯自体が歯もしくは歯茎に支えられているという点にあります。

残っている歯がしっかりとしていれば、そこまで歯茎に負担がかかることはないですが、支えの歯が揺れてきている、もしくは本数が少なくなってくると歯茎で支えるしかなくなるため、歯茎と入れ歯が接触する部位は痛みが出てしまいます。

支える歯が少なくなるにつれ、歯茎で支えなければならない面積は大きくなるので、入れ歯が歯茎と擦れる部分は多くなります。また、噛む力が残っている歯だけに負担がかかるので、残っている歯が弱っていく可能性があります。

歯茎の状態に左右される

歯茎にも2種類あり、硬くて動かない歯茎(付着歯肉)と柔らかくて動く歯茎(遊離歯肉)があります。硬くて動かない歯肉であれば力は支えやすいですが、柔らかい歯肉は痛みが出やすい傾向にあります。またお口の中の部位や患者様によって歯茎の厚みが違うので、歯茎が薄いと痛みが出やすいです。

骨の凸凹

歯茎を支えている下の骨に凹凸があると痛みが出やすいです。歯を抜いた後に、治り方によっては骨に尖った部分が残ってしまうことがあります。また骨隆起、や下顎隆起と呼ばれる病気で、噛む力によって骨が撓み骨が隆起していまうことがあります。

骨が尖っている部分は歯茎が薄くなるので、上から入れ歯が乗ると痛みが出やすいので、その部分の骨の尖を削り骨を平らにする必要があることがあります。

入れ歯の治療の限界

手術をせずに失った歯を補うことができる素晴らしい治療方法の一つである入れ歯ですが、残念ながら限界があります。

例えば極端に痩せてしまった顎の骨に対して、入れ歯の専門医が入れ歯を作製したとしても、入れ歯が安定しないこともあります。そうすると入れ歯は動いてしまい、患者様は痛みを感じてしまいます。

また入れ歯も長年装着していると骨を圧迫しているので、徐々に骨が吸収されていきます。骨が吸収されてしまうと歯茎の形も変化していくので、一度適合がピッタリと合っていた入れ歯であったとしても徐々に合わなくなってしまい、調整もしくは新製が必要になります。

さらに、人は年齢と共に新しい入れ歯への適合能力が低くなっていきます。入れ歯はあくまでも義手や義足と同じ道具の一つなので、しっかりと使いこなさなければ、美味しく食事を摂ることは難しくなります。しかし、不思議なことに、高齢者の方が古い入れ歯が合わなくなっているので、ピッタリと合う新しい入れ歯を新製したとしても、今までお使いの入れ歯の方がお口の中に馴染んでいる(慣れているので)新しい入れ歯を受け入れられない方も多くいらっしゃいます。ですので、年齢に合わせた治療が必要になります。

入れ歯の弱点を解決するために

入れ歯を使っていて痛みが出る原因は、歯茎に強く力がかかることです。これを解決すための方法をお伝えします。

①より良い素材の入れ歯を作る

健康保険の入れ歯と自費の入れ歯を比較したときに、大きく違う点は型取りの材料になります。粘土のようなもので型取りをされたことがあると思いますが、そもそもこの型取りがきちんとできていなければお口の中の状態を再現することはできないので、適合の良い入れ歯を作ることができません。

自費の入れ歯の時に用いるシリコン製の粘土はかなり精密な型取りができるので、よりお口の中の状態を鮮明に再現することができ、適合の良い入れ歯を作ることができるようになります。

②最小限のインプラントを使う

入れ歯は噛む力で沈み込む時に歯茎に接触するので、沈み込んだ入れ歯を支えてあげる「柱」が必要になります。ご自身の歯が残っている場合はその歯が柱になりますが、歯がなければ人工的に柱を作ることになります。

それがインプラントになります。

部分的な入れ歯であれば、歯がない部分に1本だけでもインプラントを入れてあげると支えになるので、歯茎に過剰な力がかかることを防ぐことができます。

下の写真のように奥歯がなくなってしまった場合、奥歯で食事をすると入れ歯は歯茎で支えるしかないので、とても安定が難しくなります。

そこで最小限のインプラントを用いることで入れ歯の沈下を防ぐことができるので、痛みを感じにくくすることができます。

総入れ歯の場合は下顎なら最低2本、上顎であれば3-4本のインプラントを使って入れ歯を安定させることが可能です。「インプラントオーバーデンチャー」と呼びます。

この場合の入れ歯は取り外し式になり、従来通り入れ歯のお掃除やインプラント周囲の清掃は必要なりますが、痩せてしまった歯茎であっても入れ歯を安定させることが可能です。インプラントに特殊な器具(アタッチメント)を装着して入れ歯を安定させるため、食事の時に入れ歯は外れることは防ぐことができます。

③インプラントを用いた固定式に変更する

「取り外しの入れ歯が面倒臭い」

「入れ歯の異物感が強くて外してしまう」

このような患者様には固定式のインプラント治療をお勧めします。固定式になるので、食事の度に外す必要もないですし、ご自身の歯のような感覚でお食事をしていただけます。

また総入れ歯の場合でも固定式に変更することができます。その患者様のお口の中の状況や噛み合わせの力、様々な要素を取り入れて治療計画を立てるため、必要なインプラントの本数は様々ですが、一般的には最低4本のインプラントが必要なため、All on 4 (オールオン4)と呼ばれている治療法です。

この方法により入れ歯の弱点である、”歯茎で支える点”や”取り外しが必要”と言った不便さを解消することができます。

上下の噛み合わせを支えるために何本のインプラントが必要かという議論もありますが、患者様にとっては煩わしい入れ歯から解放される良い治療法になります。

患者様のお口の中の状況や骨の状態に合わせて、その日に仮歯まで入れられる治療法もございますので、ご興味のある方は是非ご相談ください。

まとめ

今まで診せていただいた患者様の中にも「入れ歯なんてなくてもなんでも食べられるよ」とおっしゃる患者様もたくさんいらっしゃいました。

しかし、実際にどのようなお食事をされているかを伺うとあまり噛まなくて良いような炭水化物中心の食事になっており、お肉や魚などのタンパク質が不足している食事や野菜などの食物繊維の少ない食事を取られていることが多いように感じました。

非常に当たり前の話ですが、美味しい食事をしっかりと咀嚼・嚥下することはとても身体にとって大切なことで、人生の楽しみです。

総入れ歯になってしまってからでも、インプラントなどの現代の医療技術を使えば昔のようにお肉やお魚も食べていただけるように回復できますので、ぜひ諦めずにお問合せ頂けますと幸いです。

監修者情報

福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。

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