24/11/19
入れ歯とインプラント治療の違いは?併用する治療法や費用についても解説
高額な治療費を支払って受けたインプラント治療。
「インプラントを入れてしばらくは歯医者に掛かっていたけれど、忙しくなって最近は通っていません」
「コロナが流行るまでは掛かってたんだけど、コロナ以降は行かなくなってしまいました」
「インプラントをしてくれた医院が潰れてしまったので行けなくなりました」
など、事情は様々ですがインプラント治療後のメインテナンスに通われていない患者様はたくさんいらっしゃいます。
本来であれば、インプラント治療は生体内に人工物であるチタンのネジが入る治療になるので、治療後にも継続的にメインテナンスを行わなければ、様々なトラブルの原因となってしまいます。
これは通院していない患者様だけに責任があるわけではなく、インプラント埋入後のメインテナンスの重要性をきちんと説明して、理解をしていただいていない歯科医師側にも責任があると私は考えています。
インプラント周囲炎とはインプラントの歯周病になります。厳密にはインプラントは歯ではないため、歯周病とは呼ばず、「インプラント周囲炎」と呼ばれます。
まずインプラントはなぜ口腔内で機能することができるのか?また、なぜインプラントが周囲炎になりやすいかについてご説明していきます。
チタンは生体親和性が非常に高い(体に馴染みが良い)金属になるため、体内でも拒絶反応を起こすこと非常に稀になります。この性質を利用して歯科インプラントや人工関節は生体内で機能することができるのです。
しかし、あくまでもこれは生体の機能を騙しているだけなので、身体がチタン(異物)が入っていることに気付いてしまうと異物として排泄しようします。
つまり身体にバレないようにチタン(インプラント)は清潔に保っておくことが必須になります。
この質問は医療関係者であったも間違えることが多いのですが
「口腔内は体の外」になります。
体内と体外には定義があり、口腔内や消化管など肛門まで続く一本のトンネルは”体外”であり、体外ということは常に細菌の感染と隣り合わせの環境にあるということです。体内は外界と接しないため細菌のいない環境を指します。
上記でお話ししたように口腔内は体外になり、体外は最近と共存している環境になります。
例えば、腸であれば腸内細菌ですし、胃の中にピロリ菌がいる方もいらっしゃいます。そして口腔内は常に歯周病菌や虫歯菌など様々な細菌に晒されています。
歯科のインプラントと同じように体内にチタン製の人工物を埋め込む手術として整形外科分野で行われている「人工関節置換術」がありますが、人工関節が入る股関節や膝関節は”体内”のため、歯科インプラントと違って感染を起こしづらい環境となります。
つまり歯科におけるインプラント治療とは
といった、とても不利な環境で使っていかなければならないため、細菌感染はかなり要注意になります。
それではもし、インプラント周囲炎になってしまったらどのように対応すれば良いのでしょうか?治療することはできないのでしょうか。
インプラント周囲炎になってしまった場合の、治療の流れを解説していきます。
インプラント表面に細菌が付いてしまった場合すぐにインプラント周囲炎になるのでしょうか。
実はインプラント周囲炎の前には”インプラント周囲粘膜炎”と呼ばれる段階があります。この段階は歯でいう歯肉炎に似た状態で、インプラントの周りの歯茎だけに炎症が起こっている状態で、ブラッシングなどを改善することで治癒する可能性のある状態になります。
この”インプラント周囲粘膜炎”の時点で治療に介入することができれば、改善することもできますし、周りの骨に影響が出ていないので、やはり早い段階で手を打つに越したことはありません。
インプラントの周りに歯ブラシがうまく当たっていない事などが原因で、周りの歯茎が不潔になることでインプラント周囲の歯茎の赤みが強く、簡単に出血をしてしまうような状態になります。
イメージするととても熟しているトマトのような状態です。
しかし、この状態では強い自覚症状が出ることがあまりないので、患者様がご自身で気づくチャンスがあまりないかもしれません。その為、早期に発見するためには定期的に歯科医院でチェックを受けることが大切になります。もしも、歯ブラシを当ててインプラントの周囲の歯茎から出血するようであれば要注意です。
インプラント周囲粘膜炎は治せる可能性が高いです。
インプラント周囲の歯茎が不潔になっている原因が歯ブラシの毛先が当たっていないことであれば、きちんと毛先が当たるような歯磨きの方法を歯科衛生士から教われば徐々に歯茎は引き締まっていきます。
もしも、インプラントの被せ物(上部構造物と呼びます)の形態があまり良くなくて、どれだけ患者様が歯ブラシを頑張っても上手に綺麗にできない場合は被せ物自体の形態を修正して、ご自身での歯磨きがしやすいような形態に修正する必要がある場合もあります。
初めは周りの歯茎だけに炎症が起きていたインプラント周囲粘膜炎ですが、徐々に炎症の範囲は拡大し、次にインプラントを支えている骨を溶かし始めてしまいます。
周囲の骨が溶けていくと、初めは周りの骨に守られていたインプラントの表面にも細菌が付着してしまいます。
前半にお伝えしたように、インプラントはあくまでも人工物であるため、細菌が付着してしまうと加速度的にインプラント周囲炎は進行してしまいます。
インプラント周囲炎に移行すると、歯茎から膿が出てきたり、痛みを伴ったり、進行してしまうとインプラント自体がグラグラしてくることもあります。
では、インプラント周囲炎になってしまったらどうすれば良いのでしょうか。
まずはインプラント周囲炎の進行具合について検査をする必要があります。つまり周囲炎の進行具合によって、インプラントを撤去して治療を行うのか、インプラントを残して治療を行うかによって大きく分かれます。
当院ではスペインのMonje Alberto先生たちの論文の内容に沿って治療のプランを考えるようにしています。
この分類によってインプラント周囲炎の進行具合を診断することができ、そのインプラントを残したまま治療が可能なのか、もしくは撤去を検討する必要があるのかについては検討を進めていきます。
インプラントの周囲の歯石や炎症性の細胞などを特殊な器具を用いて洗い流して、さまざまな薬を併用して周囲の歯肉の炎症を抑えていきます。
ある程度炎症が改善した段階で、外科的な処置が必要なのか、そのままの状態で維持していけるかを判断していきます。
インプラント周囲炎に罹っている周りの骨は溶けてしまっているので、その部分に再度骨の再生療法を行い、インプラントの表面に新しい骨を作ることができるかを判断します。
骨の吸収具合によっては骨の再生が難しいので、次の手段を検討します。
インプラントの表面はザラザラに加工されており、露出してしまうと食べカスなどが付着して歯石が沈着しやすくなってしまいます。そのため、インプラントの表面を加工して食渣が付着しにくいようにできる限りツルツルになるような処置を行います。
これらの治療法を駆使しても、インプラントを残すことが難しい場合はや良くなる見込みが少ない場合は、残念ながらインプラントを撤去して感染源を除くことを検討しなければなりません。
感染源を取り除かなければ、痛みや排膿が改善しないからです。
撤去をした後に、再度インプラント治療ができるかどうかはきちんと術前に評価をする必要があり、患者様の年齢や口腔内の状況を総合的に判断しなければなりません。
このように”インプラント周囲炎”は放置しておくと悪化の一途を辿ってしまうため、本来であれば積極的に治療をしなければならないのですが、治療法が確立したばかりになので、経過観察で済まされてしまうことがよくあります。
また歯科医師がインプラント治療後の定期的なメインテナンスの大切さをきちんと患者様に説明をしていけば、インプラント周囲炎まで進行せず、粘膜炎で止めることができる可能性も十分にあります。
しかし、巷のホームページではこういったインプラント治療後のリスクやメインテナンスの大切さ記載していることが少なく、患者様も正しい情報を得ることが難しいのが現状になります。
インターネット上での情報だけに振り回されず、きちんと患者様それぞれにあった治療法を選択していただき、インプラント治療に後悔する人が居なくなること祈ります。
当院では無料相談も行なっておりますので、お気軽にお問合せください。
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
現在はフリーランス外科医として出張手術を行う傍ら、スタディーグループsurgical Implant Instituteを主宰し若手歯科医師を対象にインプラント外科を教える場の提供や講演会などでの発表をおこなっている。
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