26/06/19
根管治療でリーマーが痛いのはなぜ?器具による痛みの原因と精密治療による対策を専門医が解説
根管治療コラム
「根管治療の最中、リーマーという器具が根の中に入ってきた瞬間、ズキッと鋭い痛みが走った」
「治療が終わって帰宅したあと、ジンジンとした痛みが続いて夜も眠れなかった」
根管治療を受けた方の多くが、こうした痛みを経験しています。麻酔をしているはずなのに、なぜリーマーで痛みを感じるのか。その痛みは何かの異常を示しているのか、それとも治療が進んでいる証拠なのか。判断がつかないまま不安だけが大きくなってしまう方は少なくありません。
この記事では、リーマーという器具が根管治療の中でどのような役割を持っているのか、治療中・治療後に痛みが生じる具体的な原因、そしてリーマーが破折(破損)して根管内に残ってしまった場合に何が起こり得るのかを、臨床的な視点から解説します。さらに、こうした痛みやリスクを抑えるためにどのような治療アプローチが有効なのかについても、歯科医師が専門的な観点から紹介していきます。
目次
根管治療における「リーマー」とは、歯の根の内部(根管)に侵入した細菌感染した神経や組織を取り除き、根管の形を整えるために使用する細い針状の器具のことです。歯の神経(歯髄)が虫歯菌に侵されると、根管内には感染した組織や細菌が複雑に入り込みます。これを目視できない管の内部で除去するために、リーマーやファイルといった器具を使い分けながら、根管を一本ずつ丁寧に清掃・形成していくのが根管治療の基本的な工程です。
リーマーによる痛みを考える上で知っておきたいのは、根管という構造そのものが非常に細く、枝分かれや湾曲を伴う複雑な形をしているという点です。「同じ歯でも、なぜ人によって治療の進み方が違うのか」と感じる方もいるかもしれませんが、それは根管の形状や炎症の範囲が一人ひとり異なるためです。リーマーがこの複雑な構造の中を進む過程で、神経の炎症が残っている部分や根管の先端付近の組織に触れることがあり、そこで痛みとして感じられることがあります。
ここからは、リーマーとファイルの違いや、手用と電動式の特徴、そして根管治療全体の流れの中でリーマーがどの工程で使われるのかを、もう少し具体的に見ていきます。
リーマーとファイルは、どちらも根管内の清掃・形成に使われる器具ですが、構造と使い方に違いがあります。リーマーは断面がより丸みを帯びた形状で、主に回転させながら根管内の組織を切削していく器具です。一方、ファイルは断面に複数の刃がついており、上下に動かす、あるいは軽く回転させながら使うことで、根管の壁を滑らかに整えていく役割を担います。
実際の治療では、リーマーとファイルを段階的に使い分けながら、根管を徐々に拡大・形成していくのが一般的な進め方です。「今、根の中で何が行われているのか」をイメージしづらいことが不安につながりやすいポイントですが、いずれの器具も感染した組織を取り除き、その後の洗浄・消毒・根管充填がしっかり行えるように根管の形を整えるための工程であるという点は共通しています。
リーマーには、歯科医師が手で操作する「手用リーマー」と、専用のモーターで回転させる「電動(ロータリー)リーマー」の2種類があります。
手用リーマーは細かい力加減を歯科医師自身の感覚で調整しながら進められる一方、治療時間がかかりやすい傾向があります。
対して電動式のニッケルチタン製ロータリーファイルは、しなやかで湾曲した根管にも追従しやすく、効率的に根管を形成できる利点があります。しかし回転による切削力が根管の壁に伝わりやすいため、操作する歯科医師の技術や根管の状態の見極めによって、痛みの感じ方や根管壁への負荷に差が出る可能性があります。
どちらの器具を用いる場合でも、根管の長さや湾曲の度合いを事前に正確に把握できているかどうかが、過剰な力をかけずに進められるかどうかに影響します。CTによる三次元的な根管の把握は、こうした器具選択や操作の精度を高める上でも重要な情報になります。
根管治療の流れは、大きく以下のようなステップに分けられます。
リーマーが主に使われるのは、感染した神経や組織を取り除く「感染部分の除去」の工程です。
具体的には、CT・X線・マイクロスコープによる診査で根管の状態を確認したあと、リーマーやファイルを使って感染組織を取り除き、続いて超音波洗浄を含む複数回の洗浄・消毒を行い、最終的に根管を密封する根管充填へと進んでいきます。
「なぜこの工程で痛みを感じやすいのか」という疑問に対しては、感染部分の除去がまさに炎症の中心にリーマーが触れる工程であることが一つの答えになります。次は、この治療中にリーマーで痛みを感じる主な原因について、より具体的に掘り下げていきます。
根管治療の最中にリーマーが根管内に進んだ瞬間、ズキッとした痛みを感じる方は少なくありません。
麻酔をしているにもかかわらず痛みを感じる背景には、神経の炎症の状態、根管の形状、器具の進み方など、複数の要因が重なっていることがあります。ここからは、治療中にリーマーで痛みを感じる代表的な原因を一つずつ見ていきます。
虫歯が深く進行し、歯髄(歯の神経)まで炎症が及んでいる場合、炎症の範囲や程度によって麻酔が十分に浸透しないことがあります。炎症が起きている組織は血流が増え、組織内が酸性に傾きやすいため、麻酔薬の効果が出にくくなる場合があるのです。
「麻酔をしているのに、なぜリーマーが触れると痛むのか」という疑問の答えの一つが、この炎症組織への麻酔の効きにくさにあります。炎症が強い歯ほど、麻酔の量や追加投与のタイミングを慎重に見極める必要があります。
歯の根管は、まっすぐな一本道のような単純な形をしているとは限りません。途中で枝分かれする側枝や、根の先端に向かって複数に分岐する構造、大きく湾曲した根管など、個体差が大きいのが実情です。
こうした複雑な根管にリーマーを進める際、肉眼での確認ができない状態で操作を行うと、根管の壁に器具が触れやすくなり、痛みや違和感として感じられることがあります。マイクロスコープを用いて根管の構造を拡大して視認しながら進められれば、こうした複雑な形状にも対応しやすくなります。
根管の長さを正確に把握できていない場合、リーマーが根管の先端(根尖)を越えて、その先の歯根膜や周囲の骨組織に達してしまうことがあります。これを「オーバーインスツルメンテーション」と呼びます。
根管の外側の組織は痛みを感じる神経が豊富にあるため、ここに器具が達すると鋭い痛みや、治療後に響くような痛みにつながりやすくなります。「どこまで器具を入れているのか、自分では確認できない」という不安を持つ方もいますが、CT診断によって事前に根管の長さを立体的に把握しておくことが、このリスクを抑えるための重要な情報になります。
下顎の大臼歯のように骨が厚く密な部位や、炎症の範囲が広い歯では、麻酔薬が必要な範囲まで十分に浸透しないことがあります。この場合、治療の途中で「やはり痛みがある」と感じる場面が出てくることがあります。
痛みを我慢して治療を続けてしまうと、体に力が入り治療がしづらくなるだけでなく、必要な処置が不十分なまま進んでしまう可能性もあるため、痛みを感じた際は治療中であってもその場で歯科医師に伝えることが大切です。麻酔の追加や部位を変えた再注入によって対応できる場合があります。
治療直後から数日にわたって続く痛みは、リーマーそのものの操作よりも、根管内で起きている生体の反応や、清掃・消毒の状態が関係していることが多くあります。「治療中は我慢できたのに、帰宅後にジンジンと痛みが増してきた」というケースもよく見られます。
ここからは、治療後に痛みが続く代表的な要因として、歯根膜の炎症反応、根管内の感染リスク、根管充填材による圧痛について見ていきます。
リーマーや消毒薬が根管内を通過する際の物理的・化学的な刺激によって、歯根膜(歯と骨をつなぐ薄い組織)に一時的な炎症が起こることがあります。これを歯根膜炎と呼び、噛んだときに痛みを感じたり、歯が浮いたような感覚が続いたりすることがあります。
多くの場合は時間の経過とともに軽快していく一過性の反応ですが、症例によって痛みが続く期間は異なるため、数日以上痛みが変わらない場合は経過を歯科医師に伝えることが望ましいです。
根管の内部は非常に細く枝分かれした構造のため、肉眼での確認は不可能です。そこに存在する細菌は、バイオフィルムという膜状の集合体を形成しており、通常の洗浄だけでは除去が難しいという特徴があります。さらに、治療中にラバーダム防湿を使用していない場合、唾液に含まれる細菌が根管内に入り込み、再感染のリスクが高まることもあります。
痛みが治療後も続く場合、それが歯根膜の一時的な炎症反応なのか、あるいは根管内の洗浄・消毒が不十分なまま充填が進んでしまったことによる再感染なのかを、レントゲンやマイクロスコープによる再評価で確認していくことが必要になります。
超音波洗浄を含めた複数回の精密な消毒を行っているかどうかは、こうした再感染リスクの差につながる要素の一つです。
根管治療の最終段階では、清掃・形成した根管内に充填材を密に詰めて密封します。この際、根管の先端からわずかに充填材が溢出することがあり、周囲の組織を刺激して圧痛(押すと痛む、噛むと痛む)として感じられることがあります。
多くの場合は経過観察の中で症状が落ち着いていきますが、症例によって痛みの程度や続く期間には差があるため、心配な場合は無理に様子を見続けるのではなく、診察を受けて状態を確認することが大切です。
根管治療の説明を受ける中で、「リーマーが折れて根の中に残ることがある」という話を聞いて不安になった方もいるかもしれません。
これは実際に起こり得ることで、根管治療における代表的なリスクの一つです。ここからは、リーマーが破折する原因、破折片が残った場合に何が起こり得るのか、そして破折リーマーが見つかった場合に歯を残せるのか抜歯が必要なのかについて、専門的な視点から解説していきます。
リーマーやファイルが根管内で破折する要因はいくつか考えられます。
代表的なのは、根管が大きく湾曲している、あるいは根管の途中で急に分岐しているなど、構造的に器具へ強い負荷がかかりやすい形状である場合です。
また、繰り返しの使用によって器具自体に金属疲労が蓄積している場合や、根管内の抵抗が大きい部分に無理な力をかけて進めてしまった場合にも、破折のリスクが上がります。
器具をどのタイミングで交換し、どの程度の力加減で操作するかという管理体制や技術が、こうしたリスクの差につながる部分です。
破折した器具がそのまま根管内に残った場合、それが感染源をそのまま留めてしまうことになるのか、根管の清掃が不十分な状態で充填が進んでしまうことになるのかを確認していく必要があります。
「折れた器具がそのまま自分の歯に残っている」という事実だけでも大きな不安を感じる方が多いですが、破折片の位置(根管の入口付近か、根の先端近くか)や、その時点で根管内の清掃・消毒がどこまで完了していたかによって、その後の経過や対応は大きく異なります。
位置によっては、その後の根管治療の進行や予知性に影響を及ぼす可能性があるため、レントゲンやCTによる正確な位置確認が欠かせません。
破折リーマーが見つかったからといって、それがすぐに抜歯を意味するわけではありません。破折片の位置、根管内の感染の範囲、歯質の残存状態などを多角的に評価した上で、対応の方向性は症例によって異なります。
マイクロスコープを用いて破折片そのものを直接視認し、専用の器具で除去できる場合もありますし、根管の先端付近に位置していて通常の根管治療では対応が難しい場合には、歯根の先端を外科的に処置する歯根端切除術といった外科的歯内療法を選択肢として検討することもあります。
一方で、破折片の位置や歯の状態によっては、歯を残す治療を続けることが長期的なQOL(生活の質)にとって最善とは言えないケースも存在します。
「歯を残すべきか、それとも抜歯してインプラントなどの治療に進むべきか」という判断は、患者様にとって非常に大きな決断です。当院では歯を残す側の専門知識を持つ歯内療法専門医と、歯を失った後の治療に専門性を持つインプラント専門医が連携し、双方の視点から保存の可能性とそのリスク、そして抜歯後の選択肢を提示できる体制をとっています。どちらか一方の治療を前提とせず、多角的に判断を進めていくことができます。
過去に根管治療を受けた歯を再び治療する「再根管治療」では、リーマーによる痛みや治療の難易度が初回よりも上がる傾向があります。その理由の一つは、すでに一度削られている歯質をさらに削る必要があるため、歯質の残存量が少なくなりやすいことです。
また、以前の治療で使われた根管充填材を取り除く工程が追加されるため、その除去作業自体が根管壁への新たな刺激や負担につながることもあります。
さらに、過去の治療で根管に穿孔(誤って穴が開いてしまうこと)が生じていたり、リーマーやファイルの破折片が残存していたりするケースでは、再根管治療の難易度はより高くなります。
「以前の治療で根の中に何が起きていたのか」を、CTやマイクロスコープによって精密に再評価することが、再根管治療における痛みや合併症のリスクを抑える土台になります。再根管治療は初回治療よりも繊細な判断と技術が求められる治療であるため、症例によって治療期間や経過は大きく異なるという点を理解しておくことが大切です。
リーマーによる痛みの多くは、器具操作そのものの問題というよりも、根管の状態を事前にどれだけ正確に把握できているか、そして治療中の感染管理がどれだけ徹底されているかに左右されます。
痛みやリスクを抑えるための本質的な対策は、治療の精度そのものを上げることにあります。ここからは、その精度を支える3つの要素として、マイクロスコープ、CT診断、ラバーダム防湿について見ていきます。
マイクロスコープは、根管内を数倍から数十倍に拡大して視認できる医療用顕微鏡です。肉眼では確認できない根管の分岐や湾曲、感染組織の残存箇所、さらには破折したリーマーの位置までも視野に捉えながら治療を進めることができます。
「リーマーがどこに向かって進んでいるのか分からない」という不安に対して、術者自身が根管の構造を直接見ながら操作できることは、無理な力をかけずに進められることにつながり、結果として痛みのリスクを抑えることに寄与する可能性があります。
マイクロスコープを使用しない治療では、根管の内部を肉眼や触覚的な感覚をもとに推測しながら進める場面が出てきます。この場合、根管の分岐や湾曲、細かな感染組織の取り残しを見落としやすくなったり、逆に必要以上に歯質を切削してしまったりする可能性があります。
視野を確保した上で治療を進められるかどうかは、根管治療全体の精度に関わる大きな違いです。
通常のレントゲン撮影では、根管の状態を平面的にしか確認できません。CT撮影を行うことで、根管の長さ・湾曲の方向・分岐の有無を立体的に把握することができます。これにより、リーマーが根管の先端(根尖)を越えて進んでしまうオーバーインスツルメンテーションのリスクを事前に抑えながら、治療計画を立てることができます。
特に過去に治療歴がある歯や、根管が複雑な形状をしていると予想される歯では、CTによる事前の情報がその後の治療精度に大きく影響します。
ラバーダムとは、治療する歯だけを薄いゴム製のシートで覆い、唾液や口腔内の細菌が根管内に入り込むことを防ぐための器具です。
根管治療中に唾液が侵入してしまうと、せっかく清掃・消毒した根管内に新たな細菌が入り込み、再感染のリスクが高まります。ラバーダム防湿を全症例で標準的に実施しているかどうかは、治療後の再発リスクやリーマーの破折片が残った場合の感染管理にも関わる、見えにくいながら重要な差につながる要素です。
痛みを感じたときに自分でできる対処と、歯科医師にすぐ相談すべき場面を分けて理解しておくことは、不要な不安を減らすことにつながります。
ここからは、自宅でできる一般的な対処法、受診すべき痛みのサイン、そしてセカンドオピニオンを検討するタイミングについて見ていきます。
治療後に一時的な痛みを感じる場合、処方された、あるいは薬剤師に相談した上での市販の鎮痛剤を、用法・用量の範囲で使用することが一般的な対処法の一つです。
また、頬の外側からタオルなどで包んだ冷却材を当てて冷やすことで、腫れや痛みが和らぐ場合があります。一方で、患部を直接温める行為は炎症を悪化させる可能性があるため避けることが望ましいとされています。
寝れないほどの強い痛みが続く、頬や歯茎の腫れが広がってきている、発熱を伴っている、数日経っても痛みが軽快しないといった場合は、自己判断で様子を見続けることは避け、早めに歯科医院へ連絡することが大切です。
「今日はいいか」と受診を先延ばしにする日を重ねてしまうと、根管内の感染が広がったり、対応がより複雑になったりする可能性があります。気になる症状がある場合は、我慢せずに早い段階で相談することを心がけてください。
他院で「抜歯しかない」と診断された場合や、再根管治療を繰り返しているにもかかわらず症状が改善しない場合は、専門医による精密な検査によって判断が変わる可能性があります。
マイクロスコープやCTを用いた再評価により、これまで見えていなかった根管の状態や破折片の有無が明らかになることもあります。
当院では歯を残す治療に専門性を持つ歯内療法専門医と、抜歯後の治療に専門性を持つインプラント専門医、双方の視点から歯を評価し、治療方針をご説明することで、患者様にとって最良の治療をご提案しております。
根管治療中・治療後にリーマーが関係して感じる痛みには、神経の炎症の状態、根管の複雑な形状、麻酔の効き方、そして根管内の洗浄・消毒の状態など、さまざまな要因が関わっています。また、リーマーが破折して根管内に残ってしまうケースもあり、その場合も破折片の位置や歯の状態によって、歯を残す治療を続けられる可能性と、抜歯を含めた選択肢を多角的に検討する必要が出てくることがあります。
こうした痛みやリスクを抑えるためには、マイクロスコープによる根管の視認、CTによる立体的な診断、ラバーダム防湿による再感染予防という、治療の精度を高める要素が大きく関わってきます。一回ごとの治療の精度を高めることは、再根管治療になるリスクを下げ、長期的に自分の歯を守っていくことにつながる可能性があります。
「今感じている痛みが何によるものか分からない」「他院で抜歯と言われたが本当に歯を残せないのか知りたい」という方は、一人で判断を抱え込まず、専門医による相談・カウンセリングを受けることをおすすめします。
当院では歯を残す治療と、その先の選択肢の両方を見据えた視点から、現在の状態に合った方針を一緒に考えていくことができます。
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福居 希(医学博士、口腔外科認定医)
大阪医科大学口腔外科で口腔外科認定医および医学博士を取得した。またアメリカのカリフォルニア大学(UCLA)のインプラント科へ留学し、インプラント治療を学んだ。
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